MVP開発とは?アジャイル開発との違いやメリット・デメリットを解説

近年、スタートアップや新規事業開発において「MVP(Minimum Viable Product)」という概念が注目されています。このアプローチは、効率的かつ柔軟に製品のリリースや改善活動ができるため、特に予算や時間に制約があるプロジェクトにおいて有効です。

本記事では、MVPの基本概念からアジャイル開発との違い、メリット・デメリット、具体的な開発プロセスまで詳しく解説します。また、成功に導くための注意点や、ノーコード開発を活用する選択肢についてもご紹介しますので、MVP開発について知りたい方は、ぜひご覧ください。

目次

MVP(Minimum Viable Product)とは?

「MVP(Minimum Viable Product)」は、日本語で「実用最小限の製品」と訳され、最小限の機能を備えた状態で製品を市場に投入し、ユーザーからのフィードバックを基に改良を重ねていく開発手法です。このアプローチは、開発コストやリスクを抑えつつ、顧客ニーズに適した製品を作り上げるために非常に効果的です。

特にスタートアップ企業や新規事業では、限られたリソースの中で迅速に市場検証を行う必要があるため、活用すべき手法だと言えます。

MVP開発とは何か

MVP開発は、「最小限の機能を持つ製品」を短期間で市場に投入し、実際のユーザーの声を収集しながら改善を繰り返す手法です。

例えば、ある企業が新しいSNSアプリを開発する場合、最初にすべての機能を実装するのではなく、メッセージ機能だけを搭載したシンプルなバージョンをリリースします。これにより、ユーザーが実際に使った上で、「メッセージ機能の通知が欲しい」や「スタンプ機能があると便利」といったフィードバックをもとに改良を行います。

このように、MVP開発はユーザーの反応を取り入れながら、少しずつ製品を進化させていく手法であるため、顧客ニーズを反映しやすい開発方法です。

リーンスタートアップとの関係性

リーンスタートアップは、エリック・リース氏が提唱したアプローチで、「構築→測定→学習」のサイクルを繰り返しながら製品やサービスを最適化していく手法です。最小限の機能で製品を作り、市場に投入することでユーザーの反応を「測定」し、改善ポイントを「学習」するという流れです。

このサイクルを高速で回すことで、無駄な開発を削減しながら、ユーザーにとって本当に価値のある製品を生み出すことができます。

MVPはこのサイクルの「構築」にあたるため、「リーンスタートアップ」というビジネス手法と密接に関連している概念です。

MVP開発とアジャイル開発の違い

MVP開発とアジャイル開発は共に柔軟性を重視した開発手法ですが、目的やアプローチに違いがあります。

MVP開発アジャイル開発
目的とアプローチの違い目的は「市場検証」最小限の機能を備えた製品を短期間で市場に投入し、ユーザーの反応をもとに改良を行う目的は「効率的な開発と継続的な改良」スプリントと呼ばれる短期間の開発サイクルを繰り返し、段階的に製品を完成させる
開発スピードと柔軟性の違い迅速に市場投入できる時間とコストを抑えられるが、完成度は低くなりがちリリースまでに時間がかかる計画的に段階的な機能追加を行うため、品質を維持しやすい
市場検証と品質維持の違い「市場検証」を重視する早期にユーザーからのフィードバックを得ることができる「品質と完成度」を重視する安定した製品を徐々に作り上げる

MVP開発はアジャイル開発の一部とも捉えることができ、プロジェクト全体で見た時に、市場検証フェーズで活用されることが多いです。

アジャイル開発についてもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

アジャイルシステム開発の「アジャイル」とは?機能単位の開発サイクルを繰り返す手法 | ノーコード総合研究所

MVP開発を活用するメリット

MVP開発には、迅速な市場投入とリスク軽減を実現する多くのメリットがあります。最小限の機能で製品をリリースし、ユーザーのフィードバックをもとに改良を重ねることで、効率的に価値のある製品を作り上げることができます。

では、MVP開発のメリットについて具体的に見ていきましょう。

開発コストを抑えられる

従来の開発手法では、すべての機能を実装してから市場投入するため、膨大なコストと時間が必要でした。しかし、MVP開発では、最小限の機能に絞って開発を行うため、初期コストを大幅に削減できます。

例えば、飲食店向けの予約アプリを開発する場合、最初は「店舗検索」「予約機能」「通知」の3つの基本機能のみを実装し、後からレビュー機能や決済機能を追加することで、コストを分散できます。

また、早期にユーザーの反応を確認できるため、不必要な機能への投資を抑え、必要な部分にリソースを集中させることが可能です。

ユーザー視点で開発ができる

MVPは、実際のユーザーからのフィードバックをもとに製品を改善していくため、顧客視点で開発を進められます。市場投入後にユーザーの要望や不満を収集し、それに基づいて改良を行うことで、ユーザーにとって使いやすい製品へと進化させることができるのです。

例えば、フィットネスアプリの開発では、当初はトレーニング動画の配信が主機能と想定していたものの、ユーザーから「食事管理機能が欲しい」という声が多ければ、その機能を優先的に追加することで満足度を向上できます。

さらに、ユーザーテストを重ねることで、仮説と異なるニーズが見つかることもあるため、柔軟に対応できるのはMVP開発の大きな利点と言えるでしょう。

失敗するリスクを低減できる

MVP開発は、初期段階で市場の反応を確認できるため、失敗のリスクを抑えられます。もし市場のニーズとズレていた場合でも、大規模な損失を出さずに方向修正が可能であるため、初期段階で課題が判明すれば、仕様変更やピボットを柔軟に行えます。

例えば、新しいECサイトを立ち上げる際に、まずは限られたカテゴリーで運営を開始し、売上データを分析しながら拡張することで、リスクの分散が可能になるでしょう。このように、初期段階でユーザーの反応を見ながら柔軟に調整できるため、失敗に伴うコストや時間のロスを最小限に抑えることができます。

システム開発の費用相場についてもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

システム開発の費用相場は?コストの内訳について解説 | ノーコード総合研究所

MVP開発を活用するデメリット

MVPには多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。特に、大規模なシステムには不向きであったり、エンジニアのスキルによって成果が左右されたりする点には注意が必要です。また、ユーザーの意見に過度に影響されることで、方向性がぶれるリスクもあります。

では、MVP開発のデメリットについて具体的に見ていきましょう。

複雑・大規模な開発には適さない

MVP開発は、最小限の機能を持つ製品を早期に市場に投入し、フィードバックを得る手法ですが、複雑で大規模な開発には向いていません。なぜなら、MVPでは機能を絞り込んで開発を進めるため、セキュリティやインフラの強化が後回しになるリスクがあるからです。

例えば、金融システムではセキュリティ要件が厳格であり、MVP開発では十分に対応できない可能性があります。また、大規模なエンタープライズ向けシステムでも、最初からしっかりとしたアーキテクチャが必要です。したがって、MVP開発はこのようなプロジェクトには適した開発手法ではありません。

エンジニアのスキルに依存しやすい

MVP開発では、開発スピードと品質がエンジニアのスキルに大きく依存します。なぜなら、限られたリソースで効率的に進めるため、エンジニアが多様な技術に精通し、柔軟に対応できる能力が求められるからです。

例えば、新しい技術を取り入れた場合、技術に不慣れなエンジニアが担当すると、開発が遅延したり、技術的問題が発生する可能性があります。エンジニアのスキル不足はプロジェクト全体に深刻な影響を与えるため、MVP開発には高いスキルを持ったエンジニアの採用が必須です。

ユーザーの意見に影響されやすい

MVP開発では、ユーザーからのフィードバックを早期に取り入れることが重要ですが、過剰に依存することはデメリットとなります。なぜなら、すべてのフィードバックをそのまま反映すると、製品の方向性が不安定になり、一貫性を欠いた製品が出来上がる恐れがあるからです。

例えば、最初のMVP製品はまだ完成されておらず、ユーザーの意見が必ずしも正しいとは限りません。過剰に反映することで、ターゲット層に受け入れられない製品になる可能性があります。したがって、ユーザーの意見を取り入れつつも、製品の本来の目的を意識して開発を進めるべきです。

MVP開発のプロセスを6つのステップで紹介

MVP開発を進めるためには、計画的なプロセスが必要です。これらのプロセスを順を追って実行することで、最小限の機能を持つ製品を迅速に市場に投入し、その後のフィードバックを基に製品を改善していくことができます。

では、MVP開発を進めるための6つの主要なステップを紹介します。

①仮設と目標を設定する

MVP開発の第一歩は、仮説と目標を明確に設定することです。この段階で、開発する製品が解決しようとする課題を明確にし、その課題に対してどのようなアプローチを取るのかを考えましょう。また、目標設定を行うことで開発の進行方向を定め、後のプロセスにおける指針となります。

この段階では、誰のどのような悩みにアプローチする製品なのかを明確にすることが大切です。これにより、開発する機能やユーザーに対する価値が明確になり、その後の開発が効率よく進められるでしょう。

②ニーズの調査を行い、必要な要件を洗い出す

次に、ユーザーのニーズや市場の要求を調査し、必要な要件を洗い出します。このステップでは、ユーザーインタビューやアンケート調査、競合分析を通じて、製品が解決すべき課題やニーズを明確にし、市場における競合他社の製品やサービスを調査することも大切です。

ニーズ調査を元に、MVPで提供すべき最小限の機能を決定しましょう。この段階で機能を絞り込むことで、無駄な開発を省き、リソースを効率的に活用できます。また、開発する機能を正しく選定することで、最小限の機能でも製品の本質的な価値を伝えることが可能になります。

③プロトタイプを作成する

ニーズと要件が定まったら、次にプロトタイプを作成します。プロトタイプは、製品の初期バージョンであり、ユーザーに実際に使用してもらい、その反応を得るための大切なツールです。プロトタイプの作成時には、製品の基本的な機能とデザインを実装し、ユーザーがどのように製品を使用するかをシミュレーションできるようにしましょう。

例えば、プロトタイプ段階では、アプリの基本的な画面遷移や、最小限のデータ入力機能を実装し、ユーザーがどのようにインターフェースを操作するかを確認することが目的です。

④ユーザーテストを行いフィードバックを収集する

プロトタイプを作成した後、実際にユーザーに使用してもらい、フィードバックを収集します。ユーザーテストは、製品がどのように受け入れられるかを直接確認するための最も重要なステップです。

例えば、アプリの使い方に関する混乱が多かった場合、そのインターフェースを改善しなければなりません。ユーザーがどの機能に最も興味を持ち、どの機能が使われなかったかを把握することで、今後の開発に役立てることができます。

ユーザーの使い勝手や機能性に関する意見を収集し、どの部分が問題であるのかを把握しましょう。

⑤フィードバックの評価と改善を行う

収集したフィードバックをもとに、製品を評価・改善します。この段階では、ユーザーの意見をただ反映させるのではなく、製品の目的や仮説に沿った形でフィードバックを選別し、必要な改善を行うことが大切です。

すべてのフィードバックをそのまま反映させると、製品の方向性がブレてしまうため、慎重に評価し、どの改善が最も重要かを決定しましょう。

例えば、「機能が多すぎる」というフィードバックを受けて、機能を減らしすぎてしまうと、最終的に製品がユーザーにとって価値のあるものではなくなってしまいます。短期的なフィードバックに振り回されることなく、長期的な視点で製品の本質的な価値を維持することを目指しましょう。

⑥小さな改善を繰り返しながら機能を増やしていく

最後のステップは、小さな改善を繰り返しながら、徐々に機能を追加していくことです。小さな改善を繰り返し続けることで、製品の品質が向上し、ユーザーにとって有益な機能を提供できるようになります。

この繰り返しのサイクルが、製品の成功には不可欠であるため、ユーザーの意見を取り入れながら開発を続けることが重要です。

MVP開発する際の注意点

MVP開発には、限られたリソースを最大限に活用するための効果的な戦略が欠かせません。特に、製品がターゲット市場で受け入れられるかどうかを見極めるためには重要な要素を理解する必要があります。

では、MVP開発を成功させるための注意点について詳しく解説します。

目的やゴールを明確に決めておく

MVP開発の最初のステップは、開発の目的やゴールを明確にすることです。なぜなら、目的やゴールが曖昧だと、開発途中で方向性を失い、市場に受け入れられない製品になりやすいからです。

例えば、「中小企業向けに効率的なプロジェクト管理ツールを提供する」という目標を設定することで、機能やデザイン、戦略が明確になります。これが決まっていないと、無駄に大企業向けの機能を追加してしまうなど、コストパフォーマンスの低い開発につながる恐れがあるため注意が必要です。

目的が定まっていれば、課題発生時の判断基準が明確になり、リソースを効率よく活用できます。したがって、MVP開発では具体的な目的設定は不可欠なのです。

ユーザーニーズを正確に理解する

MVP開発で最も重要なのは、ユーザーが求めている機能を提供することです。なぜなら、ユーザーニーズを満たすコアとなる機能を搭載していないと、商品の本質的な価値が伝わらず、市場調査が難しくなるからです。

例えば、ユーザーが「現行のタスク管理アプリは機能が複雑すぎる」と感じている場合、そのニーズに応えるためにはシンプルで直感的な機能を搭載しなければなりません。

MVP開発は、ユーザーが求めている機能を満たした最小限の製品を作るという視点を持ち続けることが大切です。

UIやUXにこだわる

MVP開発において、UIやUXの品質は軽視すべきではありません。なぜなら、ユーザーが最初に抱く印象が製品の受け入れに大きく影響するからです。

例えば、直感的で操作しやすいデザインを採用すれば、最小限の機能でも高い評価を得られます。反対に、使いにくいインターフェースや複雑な操作は、ユーザーを不快にさせ、すぐに離脱させてしまいます。

したがって、MVPの段階でも、直感的なデザインやスムーズな操作を心掛け、製品の信頼性と品質を高めなければなりません。

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まとめ

本記事では、MVPの概要やアジャイル開発との違い、メリット・デメリット、具体的な開発プロセスなどを解説しました。

MVP開発においては、目的やゴールを明確に設定することが重要であり、ユーザーのニーズを正確に理解することが求められます。これらを意識することで、最小限の機能でも製品の本質的な価値を伝えられるため、市場の反応を正しく把握できます。

特にスタートアップや新規事業など、市場ニーズが不明確な場合には、MVP開発の手法を活用し、市場の声を集めながら開発を進めていきましょう。

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