教育現場の業務効率化を加速!kintone導入事例と成功のポイント

教育機関では、少子化やオンライン授業の普及などを背景に、業務効率化や学習環境の整備が急務となっています。こうした状況で注目されているのが「kintone(キントーン)」です。kintoneはクラウド上で動作する業務アプリ作成プラットフォームとして、各部署や学年間での情報共有や作業フローの可視化を可能にし、多くの教育機関で導入が進んでいます。本記事では、教育現場でのkintone活用がもたらすメリットや導入事例、成功のポイントを具体的に解説します。


目次

1.なぜ教育機関にkintoneが必要なのか?

教育機関が抱える課題として、まず挙げられるのが「紙ベースの業務が多い」という点です。出欠管理や成績管理、保護者との連絡、さらにはアンケートの集計など、紙を使ったアナログ作業が未だ根強く残っています。紙ベースでの作業は、データ入力や取りまとめに時間と手間がかかるうえ、書類の紛失リスクや持ち運びの不便さもあり、情報管理の正確性・安全性の面で大きな課題となりがちです。

また、学校や大学といった教育機関では、多種多様な立場のメンバーが関わることも特徴です。教職員はもちろんのこと、部活動の顧問や事務職員、外部スタッフ、さらには保護者も交えて情報交換を行わなければならないケースが多々あります。しかし、従来のメールベースのやりとりや紙のやりとりでは、情報が分散しやすく、必要な人へ確実に伝わらなかったり、見落とされたりするリスクが高まります。さらに、メールで連絡を送ってもリアルタイムで確認されるとは限らず、コミュニケーションのタイムラグが発生しやすいです。

こうした背景の中、kintoneはクラウド上でシステムを構築できるため、場所や時間を問わずにアクセスできるメリットがあります。たとえば、現場の先生方がスマートフォンやタブレットを使って外出先からでも状況を確認できるようになれば、連絡ミスや処理の遅れを大幅に減らすことが可能です。各種業務フローもkintone上で統合管理できるため、ワンストップで必要な情報にアクセスできるようになります。これにより、教職員や事務局が無駄なやりとりに割く時間や手間を軽減し、本来の教育指導や生徒サポートに注力しやすくなるでしょう。

加えて、kintoneはプログラミングの専門知識がなくても比較的簡単にカスタマイズができ、教育機関ごとの特性やニーズに合わせたアプリを作成できます。たとえば、専用の出欠管理アプリやテスト成績管理アプリなど、紙で運用していた仕組みをそのまま置き換えるだけでなく、データの集計やレポート作成機能まで一元化することも可能です。こうした柔軟性の高さによって、教育現場で頻繁に生じる「例外対応」にも柔軟に対応できるため、学校運営における負荷を軽減します。


2.kintoneの特徴:現場と管理部門を結ぶクラウド基盤

kintoneは、サイボウズ社が提供するクラウド型の業務改善プラットフォームです。教育機関においては、学内行事の調整や部活動の予算管理、施設設備の予約管理など、多岐にわたる作業をスムーズにつなげる役割を担います。従来は紙とメールで行われていた「情報のやり取り」や「承認フロー」を、kintoneで電子化することによって、短時間で確実に処理できる点が大きな特長です。

特に注目したいのが、管理部門と現場の教師陣が同じプラットフォームで情報を共有できることです。管理部門側が作成した申請フォームやアンケートに対して、教師陣がリアルタイムでデータを入力・更新することで、双方が最新の情報を同時に参照できます。紙の書類を回覧する時間や、メールの添付ファイルをいちいち探す手間が削減され、作業スピードが大幅に向上します。

さらに、kintoneにはコメント機能があり、アプリ内で直接やりとりを行うことができます。たとえば、行事の準備に必要な備品リストについて、管理担当者がkintone上にリストを作成し、教師から補足情報やリクエストをコメント欄で受け取る、というフローを実現できます。結果として、学校全体のコミュニケーションが滑らかになり、トラブルや連携ミスを減らす効果が期待できます。

また、kintoneは他のクラウドサービスや外部システムとの連携も比較的容易に行えます。たとえば、Google WorkspaceやMicrosoft 365と連携することで、アカウント管理やドキュメント共有をシームレスに行えるようになります。学内ポータルサイトと連携させれば、教職員や生徒、保護者が一元的に情報を確認できる仕組みも構築可能です。これによって、情報が点在せず、一つのプラットフォーム上に集約されるため、業務全体の透明性と効率性が向上します。


3.導入事例①:私立小学校の出欠管理システム

ある私立小学校では、朝の出欠確認や遅刻連絡などを従来は教員が各教室で紙に記入し、それを事務局が集計して学校全体の出席状況を把握していました。しかし、生徒数が増加するにつれて手作業によるデータ集計に膨大な時間がかかり、抜け漏れや誤記入といったトラブルも発生していたそうです。

そこで、kintoneを利用して「出欠管理システム」を構築し、生徒一人ひとりの出欠データをクラウド上で一元管理する仕組みに切り替えました。具体的には、各クラス担任が朝のHR(ホームルーム)時間にタブレットやPCからkintone上に直接出欠状況を入力し、その情報がリアルタイムに事務局側で確認できるようになりました。また、保護者も専用フォームから遅刻や欠席を連絡できるため、担任が都度電話対応を行う負担も大幅に減少しました。

この導入によるメリットは大きく、朝の業務時間を以前と比べて半分以下に削減できただけでなく、出欠状況に異常があればすぐにアラートを上げられるようになったことが挙げられます。例えば、インフルエンザが流行する時期に生徒の欠席が集中しているクラスを即座に把握し、校内での感染対策を素早く立てられるようになりました。また、集計結果を自動的にグラフ化する機能を活用することで、出欠率や長期欠席者の傾向をビジュアルで示すことが可能になり、管理部門だけでなく教員や保護者もわかりやすく情報を共有できています。

さらに、この小学校では「学内活動の可視化」として、部活動の参加状況や校外学習の同行者リストなど、さまざまな場面でkintoneのフォームを活用しています。その結果、従来の紙運用では時間を要していた名簿作成や集計作業が大幅に改善され、本来の教育活動により多くの時間を割けるようになりました。こうした事例からも、kintoneが教育現場の業務効率化にいかに有効であるかがうかがえます。


4.導入事例②:大学の研究室管理アプリ

大学では、多数の研究室が存在し、それぞれが独自の管理方法や運営方針をとっています。研究資金や実験機器の使用スケジュール、学生の出入り管理など、必要なデータの種類も膨大です。そのうえ学部や研究科が異なれば、使用するシステムも異なるケースが多く、全学的な情報共有が難しいという課題を抱えています。

ある大学では、このように研究室ごとでバラバラだった管理方法を一本化するためにkintoneを導入しました。具体的には、各研究室に合わせて「研究資金管理アプリ」「実験機器予約アプリ」「学生プロフィール管理アプリ」といった形で複数のkintoneアプリを作成し、運用を始めたのです。これにより、担当の教授や秘書だけが知っていた実験機器の利用ルールや研究資金の残高などが、学内の関係者全員に共有しやすい体制へと変わりました。

また、大学の場合、年度や学期ごとに人員の異動や新規入学・卒業があり、データの更新頻度が高いという特徴があります。しかしkintoneであれば、フォームの項目やレイアウトを必要に応じて容易に変更できるため、新しい学生の追加や教授の交代などの手続きにも柔軟に対応できます。これまでExcelファイルで行っていた更新作業やメールのやりとりが激減し、リアルタイムに正確なデータを確認できるようになった点も大きな進歩です。

研究室の学生も、自分の研究テーマや実験スケジュール、活動レポートなどをkintone上に登録することで、教授や他の学生とスムーズに情報を共有できるようになりました。加えて、実験ノートや成果物の管理に関しても、kintoneのコメント機能を活用することで、すぐにフィードバックを受け取れる仕組みを構築しています。このように、大学の研究活動は複雑で管理が難しいとされますが、kintoneを使うことでデータを一元化し、コミュニケーションコストを下げながら質の高い研究を推進できる点が大きなメリットといえます。


5.導入事例③:専門学校のキャリア支援アプリ

専門学校の特徴として、就職・キャリア指導がより実践的であることが挙げられます。生徒一人ひとりの就職活動状況や面接スケジュール、企業とのやりとりなど、きめ細かなサポートが必要になります。しかし、こうした情報を個々の担当者が紙やExcelで管理していると、データの更新が遅れたり、連絡ミスが発生したりしがちです。また、就職希望先が同じ企業に集中する場合、調整不足から面接日の重複や情報の行き違いも起こりやすくなります。

そこである専門学校では、キャリア支援部門が主体となってkintoneで「キャリア支援アプリ」を構築しました。学生ごとのプロフィールや志望企業のリスト、面接の進捗状況を一画面で管理できるようにしたのです。さらに、企業からの求人情報をkintoneに登録することで、学生は自分のスマートフォンやPCからリアルタイムに新着情報を確認できるようになりました。応募書類の提出やポートフォリオの更新なども同アプリ上で管理されるため、書類紛失のリスクが減り、学生とキャリア支援スタッフとのやりとりがスムーズに行われています。

この仕組みによって、従来は対面や電話、メールで行われていた連絡確認作業の手間を大幅に削減でき、キャリア支援スタッフはより多くの時間を学生の面談や企業研究のアドバイスに割けるようになりました。さらに、学生側も自分の就職活動状況を一目で把握できるため、スケジュール管理が容易になり、スムーズに面接準備や書類修正に取りかかれます。企業側にとっても、窓口となるキャリア支援部門が最新かつ正確な情報を把握しているため、連絡ミスが格段に減り、学校と企業の信頼関係が強化される効果が生まれました。

このように、専門学校のように実践的な指導や就職支援が重視される場面でも、kintoneのクラウド基盤が大きな力を発揮します。特に、学生と教職員、そして企業が三位一体となって連携するケースが多いため、一元化されたプラットフォームでの管理と情報共有が、学内外のコミュニケーション向上に直結すると言えるでしょう。


6.kintone導入のステップ:教育機関で失敗しないために

kintoneは便利なプラットフォームですが、教育機関で導入する際にはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。まず重要なのは、「どの業務を最優先でシステム化すべきか」を明確にすることです。現場の抱える課題は多岐にわたりますが、すべてを一度にkintoneでカバーしようとすると、現場の混乱やシステム管理の複雑化につながる恐れがあります。そのため、まずは最も負荷の大きい業務や、改善効果が高いと予測される業務から着手し、導入の成果を確認しながら段階的に広げていくのが得策です。

次に大切なのが「担当者のトレーニング」です。kintoneはプログラミングの専門知識がなくても扱えるメリットがありますが、まったくの未経験者が手探りでアプリを作成すると、使いづらい画面になったり、データの整合性に問題が生じたりすることもあります。そこで、初期導入時にはITリテラシーに比較的長けた教職員や事務スタッフを中心に、kintoneの操作方法やカスタマイズノウハウをしっかり学習してもらうことが重要です。また、導入後も継続的に利用者からフィードバックを集め、アプリの改修や運用ルールの見直しを行う体制が必要です。

加えて、トップダウンだけではなく、現場の声を反映する仕組みを取り入れることも成功のカギとなります。校長や学部長、管理部門が主導してkintoneの導入を進めても、実際に運用する現場の教員や学生が使いづらいと感じれば、定着せず形だけのシステムになってしまう可能性があります。そのため、導入プロジェクトには現場の意見を取り入れながら、試験的な運用期間を設けて問題点を洗い出し、段階的に改善していくことが大切です。

最後に、運用体制の明確化も欠かせません。システムの管理者が誰なのか、トラブルが発生したときはどこに連絡すればよいのか、バックアップやセキュリティの責任をどの部署が担うのかなど、事前に整理しておくことで運用の混乱を防ぎます。教育機関では年度更新のタイミングでスタッフの異動や新任者の着任があるため、引き継ぎの仕組みも含めて検討しておくとスムーズに運営できるでしょう。


7.kintone導入に役立つ活用イメージの比較表

以下は、kintoneが教育機関でどのように使えるかをまとめた表の一例です。校務、学務、キャリア支援などさまざまなシーンで活用できます。

活用シーン具体的なアプリ例メリット
学校事務全般出欠管理、備品管理、経理アプリ手作業削減・ミス防止・リアルタイムな情報共有
学務(学生関連)成績管理、保護者連絡、アンケートデータ集計の迅速化・ペーパーレス化・コミュニケーション向上
キャリア支援就職活動進捗管理、OB・OG名簿管理採用情報の可視化・学生の就職活動サポート強化
研究活動実験スケジュール、研究費管理研究室運営の効率化・情報の一元管理
学内行事・イベント行事スケジュール、準備タスク管理段取りの見える化・部門間のスムーズな協力

このように、kintoneは多様な業務で活用できるのが強みです。導入前にはどの分野の業務で最も効果が出るかを検討し、優先順位を付けることが成功のポイントとなります。


8.まとめと今後の展望

教育機関でのkintone導入は、紙やメールといった従来の管理手法では実現しづらかった「情報の一元管理」と「コミュニケーションのスピードアップ」をもたらします。実際の事例からも、出欠管理や研究室運営、キャリア支援など、さまざまな場面で大きな効果を上げていることがわかります。特に、データの入力や確認がリアルタイムで行われるようになることで、業務の効率化だけでなく、トラブルやミスの早期発見にもつながり、教育の質を維持・向上させる上で大いに役立ちます。

また、kintoneはノーコード/ローコード開発の代表的なプラットフォームとして、専門のエンジニアを常駐させなくても学校独自のアプリを作れる点が魅力です。これは限られた予算や人材を有効に活用しながらDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したい教育機関にとって、大きなアドバンテージとなるでしょう。今後、オンライン授業やリモートワークなど働き方・学び方が多様化していく中で、クラウドベースの柔軟なシステムはますます重要性を増すと考えられます。

教育機関におけるkintone導入を成功させるには、導入前の課題整理や運用体制の確立、そして現場を巻き込んだテスト運用など、事前準備をしっかり行うことが大切です。小さく始めて少しずつ範囲を広げることで、現場の理解と協力を得やすくなり、結果として学校全体でのスムーズな定着へとつながります。デジタル技術を活用した教育改革が求められるいまこそ、kintoneを活用し、より効率的で質の高い教育環境を実現していきましょう。

以上、教育機関でのkintone導入事例と活用ポイントを中心に解説しました。現場の課題を洗い出し、段階的にkintoneを導入することで、教育現場の業務効率化やコミュニケーション改善を大きく前進させる可能性があります。学校や大学、専門学校など、それぞれの特性に合わせた柔軟なアプリケーション構築で、ぜひ効果的に活用してみてください。


まとめ

教育機関が抱える紙ベースの業務や多人数での情報共有の課題は、kintoneの導入によって大きく改善が期待できます。出欠管理や研究室運営、キャリア支援など、さまざまな業務を一元化することで、データの活用や情報共有がスムーズになり、結果として教育の質向上や業務効率化に貢献できるでしょう。特に、プログラミングの専門知識がなくても独自アプリを作成できる点が魅力であり、学校ごとのニーズに合わせて柔軟にカスタマイズが可能です。導入の際には、まずは優先度の高い業務から着手し、現場の声を反映させながら段階的に拡大していくことが成功のカギとなります。クラウドを活用した新しい校務・学務運営を検討している方は、ぜひkintoneの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

目次