Bubbleで始めるノーコード開発入門|プログラミング不要でソフトウェアを構築する最新手法

近年、ソフトウェア開発の世界では「ノーコード」や「ローコード」というキーワードが注目を集めています。中でも話題を呼んでいるのが、Bubbleという強力なノーコード開発プラットフォームです。プログラミングの知識がほとんどなくても、直感的な操作と視覚的なUIデザインでウェブアプリやサービスを構築できることから、個人開発者から企業まで幅広く活用されています。本記事では、Bubbleを活用したノーコード開発のメリットや基本的な使い方、ソフトウェア開発全体の流れを詳しく解説します。プログラマーでなくても実践できる新時代の開発手法に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。


目次

1.ノーコード開発の基礎知識:Bubbleとは何か?

ノーコード開発とは、文字通り「コードを書かない」でソフトウェアを開発するアプローチのことです。従来はプログラミング言語を理解し、フレームワークやライブラリを使いこなさなければWebサービスやアプリケーションを構築するのは困難でした。しかし、ノーコード開発プラットフォームを活用すれば、専用のUIエディタでコンポーネントを組み合わせたり、画面遷移を視覚的に設定することで、プログラミング未経験者でも短期間でプロトタイプから本格的なサービスまで構築できるのです。

このノーコードの代表例の一つがBubbleです。Bubbleは、画面の見た目(フロントエンド)とデータベース(バックエンド)、ワークフロー(ロジック)まで一貫してブラウザ上で設計できる統合型の開発プラットフォームとして知られています。特に優れているのは、プラグインやテンプレートが豊富で、エンジニアリングの知識がなくても、ある程度の複雑な機能をスピーディに実装できる点です。

そして何よりも大きいのは、初期費用をほとんどかけずにサービス構築を始められるというハードルの低さです。試作品(MVP)を作りたいスタートアップ、Webサービスを拡充したい中小企業、あるいは副業として個人開発を行いたい方など、幅広い層にとって強力な選択肢となっています。これまでは専門の開発会社に数百万~数千万円かけて発注していた領域も、Bubbleならば素人でも少しずつ学びながら自主的に実装できる可能性があるのです。

さらに、Bubbleはコミュニティが非常に活発です。公式フォーラムでは、英語圏のユーザーを中心に数多くのトピックが日々やり取りされ、学習リソースもどんどん充実しています。日本語での情報も徐々に増えてきており、初心者にとって敷居が下がってきているのも大きな特徴です。ノーコード開発と聞くと「本当に使い物になるの?」と半信半疑な方も多いかもしれませんが、Bubbleはビジネスの現場でも十分に耐えうる機能性と拡張性を兼ね備えています。


2.なぜBubbleが注目されるのか:ノーコード開発のメリット

ノーコード開発がこれほどまでに注目される理由を理解するために、まずはBubbleがもたらすメリットを整理してみましょう。大きく分けると以下のような利点があります。

  1. 開発スピードの向上
    従来のプログラミング開発は、要件定義、設計、実装、テストといった工程を順序立てて進めるため、完成までに時間がかかりがちでした。一方、Bubbleでは視覚的なUIエディタ上で各パーツを配置しながら、同時に動作確認を行えます。試しに画面を作り、ボタンを配置し、そのボタンに対するアクションを設定するという流れをリアルタイムで反映できるため、プロトタイプ作成からリリースまでが圧倒的に速いのが強みです。
  2. 開発コストの削減
    ノーコード開発では、専門知識がない人でも動くものを形にできます。企業や個人がエンジニアを大量に雇わなくても、新規事業やアイデアを検証する段階で大きな初期投資を抑えられるわけです。開発費用を最小限に抑えて、市場テストを行いながら必要に応じて機能を追加していく“リーンスタートアップ”の手法とも相性抜群です。
  3. 柔軟な修正とアップデート
    従来の開発プロセスだと、仕様変更や追加機能を盛り込む際に大幅な手戻りが発生し、費用や日程が膨れ上がるケースも珍しくありません。Bubbleなら、UIエディタやワークフローの変更が直感的に行えるので、動的にサービスの方向性を変えられます。アジャイル開発の文脈でも、高速なPDCAを回す手段として効果的です。
  4. プラグインによる拡張性
    Bubbleのプラグインストアには、有志が開発したさまざまな機能拡張があります。SNS連携や支払いシステム、外部APIとの接続など、複雑な開発知識を要する部分がすでにパッケージ化されている場合が多いです。これらを組み合わせるだけで高度なサービスを実装できるため、想像以上に幅広いサービスがノーコードで形になります。
  5. 学習コストが低い
    もちろん英語がメインですが、公式ドキュメントやフォーラムは充実しており、チュートリアルやYouTube動画などの教材も増えています。ある程度のITリテラシーがあれば、初心者でも短期間で基本的なアプリを動かせるようになるのも大きな魅力です。

これらのメリットが合わさって、「新サービスを試しに作りたい」「MVPとしてユーザーの反応を知りたい」「既存の業務システムをアップデートしたい」といった多種多様なニーズにBubbleがフィットするというわけです。結果的に、ノーコード=簡易ツールというステレオタイプを打ち破る形で、その実用性が高く評価されています。


3.主要ノーコードツール比較表:Bubbleとの違い

ノーコード・ローコード分野はBubbleだけではなく、他にも多種多様なプラットフォームがあります。下記の表では、代表的なノーコードツールを比較しながら、それぞれの特徴を整理してみましょう。

ツール名特徴適した用途学習コスト
Bubbleフロントエンド・バックエンド・DBを一括管理、プラグイン豊富Webアプリ全般、MVP開発中程度(UIが独特)
Adaloモバイルアプリ開発に強みiOS/Androidアプリの試作やや低め
Glideスプレッドシート連携で即席アプリ作成社内ツール、簡易モバイルアプリ低い
Webflowデザイン性の高いWebサイト制作コーポレートサイト、LP中程度(CSS理解必要)
AirtableDB(表計算)中心の柔軟なアプリ化データ管理、在庫管理、顧客管理やや低め

上記のようにツールごとに得意領域が異なります。Bubbleは「Webアプリを総合的に作り込みたい」「複数ページ間の遷移やユーザーログイン、外部API連携を柔軟に設定したい」という要望に適しており、サービス開発の“根幹”をノーコードで実現したいケースに向いています。一方、モバイルアプリ開発に特化したい場合はAdaloが使いやすかったり、社内用のデータ管理アプリだけ必要な場合はAirtableがシンプルだったりと、用途に応じてツールを選ぶのがベストです。


4.Bubbleの基本構成:UIエディタ・ワークフロー・データベース

Bubbleがノーコードでソフトウェア開発を完結できる理由は、大きく分けて下記の機能が一体となっているからです。

  1. UIエディタ
    画面上でドラッグ&ドロップしながらテキスト、ボタン、画像などのコンポーネントを配置します。色や位置、サイズといったデザイン要素もビジュアルに操作できるため、HTML/CSSの知識がなくても直感的にレイアウトを作成可能です。さらに、レスポンシブデザインの設定もGUI上で行えるので、PC・スマホ・タブレットすべてに最適化した画面を容易に作れます。
  2. ワークフロー(ロジック)
    Bubbleの真骨頂とも言えるのが、ワークフロー機能です。ユーザーがボタンをクリックした際にどのような処理を行うか、外部APIとの通信はどうするか、といった一連のロジックを“条件(Event)”と“アクション(Action)”を組み合わせて可視化できます。プログラムコードを書く代わりに、画面上で「If~Then~」のルールを組み合わせるだけで実現できるのです。
  3. データベース(DB)
    アプリ内で扱うデータの構造を設計し、ユーザー情報や投稿内容などを保存するテーブルをGUI上で設定します。SQL文を書く必要はなく、Bubble独自のData Type(エンティティ)とField(属性)を追加していく形です。データの読み書きもワークフロー上で“Create a new thing”や“Make changes to thing”などのアクションを選ぶだけで完結します。

このように、UIデザイン・ビジネスロジック・データ管理の3要素がワンストップで扱える仕組みがBubbleの最大の魅力です。従来であればフロントエンドはHTML/CSS/JavaScript、バックエンドはPHP/Ruby/Pythonなど、DBはMySQL/PostgreSQLといった複数言語や環境を学ばなければならなかったのが、Bubbleでは1つのプラットフォームに集約されています。


5.実際の開発手順:Bubbleでアプリを作る流れ

Bubbleでアプリを開発する際の基本的なステップは、以下のようになります。

  1. 新規プロジェクトの作成
    まずはBubbleにログインし、New Appを作成します。アプリ名や目的を簡単に設定すると、キャンバスのようなUIエディタ画面が表示されます。
  2. ページ構成とUIデザイン
    作成したいページを追加し、各ページごとにヘッダー、メインコンテンツ、フッターといったセクションを配置してデザインを整えます。テンプレートを利用すると、すでにある程度完成されたUIが適用できるので学習コストを下げられます。
  3. データタイプの設計
    想定するデータ構造を決めます。たとえば、ユーザーデータ(User)、投稿データ(Post)、コメントデータ(Comment)などのData Typeを作成し、それぞれの属性を定義します。ここでアプリ全体のデータモデルをしっかり整理しておくと、後の作業がスムーズに進みます。
  4. ワークフローの設定
    UI上のボタンやフォームに対してアクションを割り当てます。たとえば、ユーザーが“登録”ボタンを押したときに新たなレコードをDBに保存し、その後に「登録完了」画面へ遷移するといった流れをビジュアルに構築できます。条件分岐も用意されているので、「ログイン中でなければログイン画面へ」などの処理も簡単に設定可能です。
  5. プラグインのインストール
    もし外部APIを活用したい場合や支払い機能を追加したい場合は、プラグインを導入します。Bubbleのプラグインマーケットプレイスからボタン一つでインストールでき、あとは使用したい画面やワークフローにコンポーネントを追加するだけです。特にStripeを使った決済機能、Google Maps連携などがよく利用されます。
  6. テストとデバッグ
    アプリをプレビューしながら想定通りの挙動をしているか検証します。フォームのバリデーションや画面遷移に問題がないか、スマホ表示でデザインが崩れていないかをチェックしましょう。バグが見つかれば、ワークフローやデータベース設定を修正して再テストを繰り返します。
  7. リリースと公開
    十分にテストが済んだら、Bubbleが提供するホスティング機能を利用して本番環境にデプロイします。独自ドメインを設定すれば、自社サービスのURLとして一般ユーザーに公開可能です。サーバーの設定など技術的に難しい作業もBubble側が担うため、手間が大きく削減されます。

以上のプロセスを繰り返しながら、段階的に機能を拡充していくのがBubbleの開発スタイルです。アジャイル的なアプローチと非常に相性が良く、数日~数週間でMVP(Minimum Viable Product)をリリースし、ユーザーからのフィードバックを得ながら改善を重ねられます。


6.応用機能:プラグイン活用と外部API連携■■

ノーコード開発というと、どうしても単純なアプリしか作れないイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、Bubbleはプラグインを使うことで高度な機能拡張が可能です。以下に代表的な事例をいくつか挙げます。

  1. 地図連携(Google Maps Plugin)
    ユーザーの現在地を表示したり、地図上にマーカーを配置して店舗情報を登録できるなど、位置情報を活用したサービスを実装できます。たとえば、宅配サービスや旅行プラン共有サービスなどが考えられます。
  2. 決済機能(Stripe Plugin)
    ECサイトやオンラインサロンなど、有料サービスを提供する際に欠かせない決済を簡単に導入できます。クレジットカード決済からサブスクリプションまで幅広くカバーし、売上管理もBubbleのバックエンドで一元化可能です。
  3. メール配信(SendGrid Plugin)
    会員登録時の確認メールやパスワードリセット、キャンペーン情報を送るニュースレターなどを自動送信できます。複数のテンプレートを用意して条件に応じて切り替えることも、ノーコードで設定できます。
  4. SNS認証(Facebook Login, Google Loginなど)
    ユーザーがわざわざ新規アカウントを作らなくても、SNSのアカウントを使ってログインさせる仕組みを実現します。UXを向上させつつ、ユーザーデータ収集も効率化できます。

さらに、BubbleのAPI Connectorを使えば、プラグインとして提供されていないサービスとも連携可能です。APIのエンドポイントを設定し、必要なパラメータを指定することで、外部サービスとのデータのやり取りをスムーズに実行できます。これにより、Bubble上で完結できる範囲がぐっと広がり、たとえば在庫管理システムや顧客管理システムと連携した高度な業務アプリを構築することも不可能ではありません。


7.運用とセキュリティ:ノーコードでも気をつけたいポイント

ノーコードだからといって、セキュリティを軽視してよいわけではありません。Bubble自身もユーザー認証やデータアクセス権限、SSL対応などを標準でサポートしていますが、開発者側も適切な設定をする必要があります。たとえば、データのプライバシールールを細かく設定しないと、意図しない情報が外部から閲覧できてしまうリスクがあります。

また、運用フェーズでは性能面(パフォーマンス)に注意が必要です。ノーコードツールは可視化や汎用性を高めるために抽象レイヤーが多く、その分、複雑な処理を走らせると動作が重くなるケースも考えられます。Bubbleにはプランごとのリソース制限があり、ユーザーアクセスが増えた際には上位プランへの切り替えが必要になる場合もあります。

さらに、重要データを扱う場合はバックアップやログ監視の体制を整えておくことが大切です。Bubbleは自動バックアップ機能やバージョン管理を備えていますが、あらかじめ定期的なエクスポートや監査ログの分析を行える仕組みを用意しておくと安心です。ノーコードだから楽と思っていたら、運用時にトラブルが発生して対処できない—というのは避けたい事態ですので、開発段階から基本的なセキュリティや運用設計にも目を向けておきましょう。


8.事例紹介:Bubbleで作られたサービスの可能性

ノーコードと聞くと、どうしても「簡易ツール」のイメージがつきまといますが、実際にはBubbleを使って数多くの本格的なWebサービスが立ち上がっています。たとえば、以下のような事例があります。

  • スタートアップのMVP
    あるスタートアップ企業が新規事業の検証用に、SNSとECが融合したサービスをBubbleで数週間で構築し、ユーザーテストを実施。後に投資家の目に留まり、追加資金調達につながった例もあります。
  • 業務管理システムの内製化
    中小企業が外部ベンダーに依頼していた受発注管理システムを廃止し、Bubble上で社内向けの業務管理ツールを作成。ユーザー数が限られているため、ノーコードでもパフォーマンス面で問題なく動作し、社内業務の効率アップに大きく貢献しました。
  • コミュニティプラットフォーム
    オンラインコミュニティを運営する団体が、Bubbleで会員情報の管理やイベント告知機能を搭載したポータルサイトを構築。SNSログインや外部決済を導入し、短期間で有料会員登録が可能なサービスを完成させています。

いずれの事例でも共通しているのは、「開発に要する時間とコストが大幅に削減され、なおかつ実際に人々が使えるレベルのサービスが提供できる」という点です。プログラミング言語の知識にとらわれず、アイデアを素早く形にして市場で試したい方にとって、Bubbleはまさに強力な味方と言えるでしょう。ソフトウェア開発の新たな道筋として、プログラマー以外の方が「ものづくり」に参入できる時代を牽引しているプラットフォームでもあります。


まとめ

ノーコード開発の代表格として急速に注目を集めるBubbleは、ソフトウェア開発の敷居を大きく下げる存在として確固たる地位を築き始めています。プログラミングの専門知識を不要とする一方で、視覚的なUI編集と強力なワークフロー機能、プラグインによる拡張性を兼ね備え、個人から企業まで幅広いユーザー層を取り込んでいます。単なる簡易的なツールではなく、実用レベルで本格的なWebアプリを構築できるプラットフォームとしての可能性は非常に高いと言えるでしょう。

もちろん、あらゆるユースケースをカバーできるわけではなく、大規模開発や特殊な要件では従来のプログラミングが必要となる場面もあります。しかし、少なくとも「プロトタイプを素早く立ち上げて試してみたい」「社内業務を効率化するWebツールを内製化したい」「起業や新規事業でまずは小さく始めたい」というシチュエーションでは、Bubbleは大きなアドバンテージをもたらします。

今後ますますノーコードやローコードのプラットフォームは進化していくと考えられ、Bubbleを取り巻くコミュニティも一層拡大していくでしょう。ソフトウェア開発に興味がある方、プログラミングの学習に苦手意識がある方、迅速にアイデアを形にしたいビジネスパーソンやスタートアップ担当者の方は、この機会にぜひBubbleの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。アイデアを「すぐに形にできる」という強みは、あなたのビジネスやプロジェクトにとって大きな武器となるはずです。

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