SaaSのコスト削減方法とは?|無駄を省いて利益率を高める戦略ガイド
はじめに
SaaS(Software as a Service)は、初期導入コストを抑えられる一方で、月額課金・従量課金によるランニングコストが積み重なり、気付かぬうちに大きな負担となることもあります。特に複数のツールを並行利用している企業では、「重複契約」「未使用ライセンス」「非効率なプラン選定」などが原因でコストが膨らみがちです。本記事では、SaaSを継続的に活用しながらも、無理なくコスト削減を実現するための具体的な方法と実践ポイントを、導入前・導入後・運用フェーズに分けてわかりやすく解説します。
SaaSコストが増える原因とは?
まずは、なぜSaaSの利用コストが増えてしまうのかを正しく理解することが必要です。よくある原因としては、①契約ツールが目的別に増え続ける、②プランの見直しをせずに高額プランのまま放置している、③利用部門が多く、ライセンス管理が煩雑になっている、④利用率の低いツールに継続課金している、⑤導入時にROIを明確に設計していない、などが挙げられます。これらの原因が複合的に重なった結果、毎月のSaaS費用が売上に見合わない形で増加してしまうのです。改善のためには、利用状況の可視化と棚卸しから始めることが基本です。
SaaS契約の棚卸しと見直し
SaaSのコスト削減は、まず「現状把握」からスタートします。すべてのSaaS契約をリストアップし、以下の観点で棚卸しを行います。
- どの部署が利用しているか
- 契約ライセンス数と実際の利用者数
- 利用頻度(ログイン履歴、使用機能)
- 月額費用・年額費用
- 他ツールと機能が重複していないか
この情報を一覧化し、優先順位をつけて「解約候補」「統合候補」「プラン見直し候補」に分類するのが効果的です。特に、導入から時間が経過しているSaaSほど見直しの余地が大きく、サービス内容のアップデートによってより安価な代替手段が存在している場合もあります。棚卸しは年1回以上の頻度で実施するのが理想です。
ライセンス最適化によるコスト削減
SaaSの料金体系は多くの場合、「ユーザー数課金」「機能別課金」「従量課金」などで構成されています。このうち最も影響が大きいのがユーザー数です。導入当初に多めに契約したライセンスが、実は使われていないというケースは少なくありません。たとえば10人契約していて実際に使用しているのは6人程度である場合、4人分は完全に無駄なコストとなっています。また、部署ごとに契約されている場合は、全社で統合することでライセンス数を圧縮できる可能性もあります。利用状況の可視化ツール(例:SaaS管理SaaS)を活用し、適切なライセンス数を維持することが重要です。
統合型SaaSの活用でツールを集約
業務ごとに異なるSaaSを導入するのではなく、複数機能を内包する「統合型SaaS」の活用もコスト削減につながります。たとえば、営業管理・顧客管理・請求管理を別々に運用している企業では、これらを統合したCRM(例:Salesforce、HubSpot)やERP(例:freee、マネーフォワードクラウド)に一本化することで、重複コストや連携ミスを防げます。また、ツールが分散していることで発生する「データの断絶」も統合により解消され、業務効率も向上します。ただし、導入コストと運用ハードルはやや高めなので、移行計画や従業員教育を含めた全体設計が必要です。
無料プランや月額プランの見直し
多くのSaaSには無料プラン、あるいは機能制限付きのライトプランが用意されています。特に利用頻度が低いツールや一時的なプロジェクトで使用するSaaSについては、積極的に無料プランへのダウングレードを検討しましょう。また、年額契約しているものでも「実際は月に数回しか使っていない」場合は、月額プランへ変更して必要なときだけ使う方が結果的に安くなることもあります。注意点として、プラン変更によるデータ制限・サポート体制の変化などは事前に確認が必要です。機能と料金のバランスを再評価し、必要最低限のプラン構成にすることが節約の鍵となります。
社内ルールとガバナンスの整備
SaaSの導入が部署主導で行われている企業では、「勝手に契約→使われない→放置される」という非効率が生まれがちです。これを防ぐには、SaaS導入・利用に関する社内ルールやガイドラインの策定が不可欠です。たとえば「新規SaaSは情シス承認制にする」「使用申請書とレビューを提出する」「導入目的と評価基準を明文化する」などが挙げられます。さらに、SaaS導入後には定期レビューを義務づけることで、使われていないツールの自動解約が促進され、コスト最適化につながります。IT資産管理の一環として、SaaSガバナンス体制を強化することは、長期的な利益確保に直結します。
SaaS管理ツール(SaaS Management Platform)の導入
企業規模が大きくなるほど、SaaSの契約・利用状況を人手で管理するのは困難になります。そこで注目されているのが、SaaSの契約情報、利用状況、コストを一元管理できる「SaaS管理ツール(SMP)」です。代表的なツールには「Jellyfish」「BetterCloud」「Sastrify」などがあり、利用ライセンスの稼働率分析やアラート通知機能も備えています。また、セキュリティ対策としても有効で、不要なアカウントの棚卸しや不正アクセス検知なども可能。特に、複数部署でSaaS導入が進む企業では、SMPの導入がコスト管理の鍵となるでしょう。
ベンダー交渉・再契約による値下げ
長期契約をしているSaaSベンダーに対しては、定期的な価格交渉も有効です。特に利用年数が長く、利用人数も一定以上いる企業は、ボリュームディスカウントや追加オプション無料化などの提案を受けられる可能性があります。また、競合SaaSとの比較資料を提示したり、導入実績を元に「解約も視野に入れている」ことを伝えると、価格交渉の余地が生まれます。SaaSはサブスクリプションモデルであるがゆえに、ベンダー側も長期継続を重視しており、値引き交渉に応じやすいのです。ベンダー交渉は、コスト削減と同時に契約条件の最適化にもつながります。
まとめ
SaaSのコスト削減は、単に「安いツールを選ぶ」だけでは不十分です。必要なのは、自社の利用状況を正確に把握し、無駄な契約を省き、必要な機能に集中する「戦略的な最適化」です。今回ご紹介したように、棚卸しやライセンス見直し、統合型SaaSの活用、プラン変更、社内ルール整備、SaaS管理ツールの導入、そしてベンダー交渉まで、具体的な手段は多岐にわたります。これらを組み合わせることで、年間数十万円〜数百万円単位でのコスト削減も現実的です。SaaSの活用は業務効率を高める強力な武器ですが、その恩恵を最大限に得るには、費用対効果の見直しと継続的な改善が不可欠です。