SaaS UI/UX改善事例10選|顧客満足度と定着率を劇的に上げた実践アプローチ
はじめに
SaaSビジネスにおけるUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザー体験)は、単なるデザイン要素ではなく、売上・解約率・LTVに直結する極めて重要な成長要素です。特に、UI/UXの改善によって「操作の迷いが減る」「利用継続率が上がる」「サポートコストが削減される」といった好循環が生まれ、SaaSの成長に大きなレバレッジをかけることができます。
本記事では「SaaS UI UX 改善事例」をテーマに、実際に成果を上げた10の改善ストーリーを紹介します。単なる見た目の刷新にとどまらず、ユーザー行動やデータに基づいた改善アプローチを中心に構成しているため、自社プロダクトの改善にも応用しやすい内容となっています。
事例1:初期オンボーディングフローの可視化でアクティブ率2倍(例:Notion)
ナレッジ管理SaaS「Notion」では、初回利用時の体験が離脱要因となっていたため、オンボーディングフローを完全に見直しました。以前は空のキャンバスと最小限のガイドのみで、操作に迷うユーザーが多く発生していました。改善後は「テンプレート選択→名前入力→目的別設定→チュートリアル導線」までを一貫したフローで設計し、操作迷子を防止。
結果、初回5分以内のアクション発生率が従来の約45%から80%以上に上昇。さらに、7日間のアクティブユーザー定着率も倍増しました。複雑なサービスであればあるほど、「使い始めるまでの導線設計」が極めて重要であることを示す好例です。
事例2:不要機能の削減でUXを簡素化(例:Basecamp)
プロジェクト管理SaaS「Basecamp」では、既存ユーザーのフィードバックから「機能が多すぎて迷う」という課題が浮上。チームで使用している機能を分析した結果、全ユーザーの70%以上が使っていない機能が複数存在することが判明しました。
そこで思い切って機能の統合・削除を行い、重要機能への導線だけを強調。UIの情報密度が下がり、メイン操作が視覚的に際立つようになったことで、作業効率が大幅に改善されました。結果として、ユーザーあたりのタスク登録数が1.6倍に増加。全体の利用継続率にもプラス効果が見られました。
事例3:データドリブンなA/Bテストで導線最適化(例:Dropbox)
Dropboxでは、プロフェッショナルユーザー向けのアップセルページにおいて、ボタン配置と説明文言の違いによってCVR(コンバージョン率)が大きく変わることが判明。既存UIと新規パターンのA/Bテストを実施した結果、「ボタンの色を変えただけで+12%、CTA文言を具体化することで+18%」という改善が見られました。
最終的に両方を組み合わせた新UIを全体適用し、アップグレード率が約30%向上。UI改善は「感覚」ではなく、ユーザーデータを元にした定量的な検証が成功の鍵であることを証明した好事例です。
事例4:モバイル最適化による離脱率低下(例:Slack)
Slackでは、スマートフォンでの利用者が全体の約35%に上るにも関わらず、PC版中心のUI設計がそのまま流用されており、離脱率が高い傾向にありました。そこでモバイル専用UIとして「メニューのスワイプ化」「通知設定のショートカット化」「チャット入力エリアの拡大」などを施し、操作性を根本から見直しました。
その結果、モバイルセッションの平均滞在時間が2.3倍に増加し、離脱率も38%から22%へと劇的に改善。マルチデバイス対応の中でも、モバイルUX最適化は見落とされがちですが、成果に直結する改善ポイントです。
事例5:空状態(Empty State)を活用したUI改善(例:Trello)
Trelloでは、新規ボード作成時に「空のまま放置される率」が高かったため、空状態の画面にチュートリアルとテンプレート提案を組み込むUI変更を行いました。「次にやることが分かる」ことで、ボードの活用率が大幅に向上。
結果として、初回ボードにタスクを1つ以上登録する率が、変更前の約47%から87%に急上昇しました。Empty Stateは単なる未入力画面ではなく、UXの“起点”として活用すべき重要領域であることを示す事例です。
事例6:ナビゲーション再設計で直帰率を削減(例:Zendesk)
カスタマーサポートSaaS「Zendesk」では、機能数の多さがユーザー体験を阻害していたため、ナビゲーションをゼロベースで再設計しました。従来のメニューバーでは同列で並んでいた「チケット管理」「レポート」「チャット」「設定」などを、利用頻度と業務フロー順に再配置。
さらに、左側固定メニュー+パンくずナビゲーションに統一し、ユーザーが現在地を把握しやすくしました。その結果、直帰率は約42%から29%に改善。ナビゲーション設計はUI改善の「骨格」であり、可視化・整理・階層化がカギになります。
事例7:ローディング体験の演出でユーザー離脱を防止(例:Figma)
Figmaでは、プロジェクト読み込み時のロード時間が約3〜5秒かかっていたものの、読み込み完了まで無音状態でユーザーが離脱する課題がありました。そこで、「進捗バー」「ローディング中に表示されるTips」「操作方法のアニメーション紹介」などを導入。
ただの待ち時間だったUIが「学びの時間」へと変わり、ユーザー体験が大幅に改善されました。ユーザー離脱率も平均で17%改善し、継続率の向上にも寄与しました。読み込みの待ち時間すらポジティブ体験に変える工夫は、SaaS UXにおける盲点です。
事例8:チャットUIの改善でカスタマーサポート効率2倍(例:Intercom)
Intercomでは、チャットサポート画面のUIを「固定ウィンドウ」から「全画面モード選択+履歴表示+FAQ提案付き」に刷新。ユーザーはチャット中でも過去ログや自動FAQを参照できるようになり、自己解決率が向上。
その結果、有人対応の問い合わせ件数が約40%減少し、対応スピードも1.8倍に改善。サポートコスト削減とCS満足度の両立を実現した好例です。UI改善は社内コストにも直結する戦略的施策であることがよく分かります。
事例9:アクセス解析をもとにCTAボタンを改善(例:Canva)
Canvaでは、有料プラン誘導のCVRが低迷していたため、ヒートマップとクリックデータをもとにCTAボタンの位置・文言・色を再設計。「無料で始める」→「今すぐデザインを始める」へと文言を変え、クリック率が+22%向上。
さらに、スクロール完了後にボタンが自然に現れる設計を取り入れることで、誘導の違和感を減らしCVRが最終的に1.6倍へ改善されました。CTAのテスト改善はコンバージョン成果に直結する、もっともROIの高いUI施策のひとつです。
事例10:アカウント設定画面の再設計でチャーン率改善(例:HubSpot)
HubSpotでは、チャーン率の高いユーザー群を分析した結果、「設定が分かりづらくて十分に活用できない」という声が多く見られました。そこでアカウント設定画面をカテゴリ分類し直し、FAQ・ヘルプリンク・リアルタイムガイドを画面内に常設。
ユーザーが設定のカスタマイズを“自走”で行えるようになったことで、設定完了率が43%→82%に改善。その結果、アクティブ利用継続率とNPSが向上し、3ヶ月以内の解約率が約15%減少しました。
まとめ
UI/UX改善は単なる見た目のリニューアルではなく、「成果」に直結する戦略的な経営施策です。本記事で紹介した10の改善事例に共通しているのは、ユーザー行動データ・フィードバック・プロダクト理解を基に施策を設計している点です。
特にSaaSにおいては、UI/UXのわずかな改善がLTV・チャーン率・CAC回収速度など、KPI全体に波及効果をもたらします。ぜひ本記事の改善事例を参考にしながら、自社のプロダクトにも応用し、定着率と満足度の最大化に取り組んでみてください。