勤務間インターバル制度の管理方法とは?法改正対応・労務リスク対策に役立つ実践ガイド

目次

はじめに

働き方改革関連法が施行されて以降、企業に求められる労働時間管理の水準は大きく引き上げられました。特に注目されているのが、「勤務間インターバル制度」です。これは、終業から次の始業までに一定時間の休息(インターバル)を確保する制度で、長時間労働の抑制や過労死対策として国も導入を推進しています。

中小企業でも厚生労働省の助成金対象になっており、導入のハードルは下がっていますが、実際にどのように運用・管理すれば良いか悩む企業は多いのが実情です。本記事では、勤務間インターバル制度の基本から、実務上の管理方法、対応ツールの紹介、注意点までを徹底解説します。

「今後インターバル制度が義務化されるのでは?」といった声もある中、今こそ正しい知識と管理体制の整備が求められています。

勤務間インターバル制度とは?制度の基本を解説

勤務間インターバル制度とは、ある勤務日の「終業時刻」から、翌日の「始業時刻」までに一定以上の休息時間を設けることで、労働者の健康と生活時間を確保する制度です。

制度の法的位置づけ

  • 2019年4月の働き方改革関連法により、企業に対して「努力義務」として導入が定められた
  • 正式には「勤務間インターバル制度の導入の促進に関する法律(改正労働時間等設定改善法)」
  • 「義務」ではないが、厚労省の助成金対象制度となっている

インターバル時間の目安

多くの企業では「9時間〜11時間」を基準に設定しており、欧州諸国では11時間以上の休息時間を義務付ける国も多いです。

実例

  • 終業:21:00 → 翌日始業可能:翌朝6:00以降(9時間インターバル)
  • 終業:0:00 → 翌日始業可能:9:00以降

このように、前日の終業時刻によって次の始業が「後ろ倒し」される点が特徴です。

なぜ勤務間インターバル管理が重要なのか?

勤務間インターバルは、単なるルールではなく、企業にとって重要なリスクマネジメント施策でもあります。

1. 健康リスクの低減

十分な休息なしに翌日勤務すると、睡眠不足・疲労蓄積により健康被害のリスクが高まります。これは企業の安全配慮義務違反にも直結します。

2. 過労死・労災リスクの抑制

長時間労働によるうつ病や心疾患などで労災認定されるケースでは、「インターバルが取れていなかった」ことが問題視されることもあります。

3. 生産性と集中力の確保

休息がしっかり取れていれば、業務中の集中力・作業効率も向上します。「働き方の質」を上げる施策でもあります。

4. 企業イメージ・採用力の向上

インターバル制度導入を外部へアピールすることで、ホワイト企業としての認知向上にもつながります。

このように、勤務間インターバル制度は企業にとってリスク回避と成長戦略の両面を兼ね備えた重要な要素です。

勤務間インターバルの管理方法【手動 vs システム】

手動での管理(Excelなど)

  • 従業員の打刻データから前日の終業時刻と当日の始業時刻を抽出
  • インターバル時間を計算し、基準値未満の場合は警告または申請

→ 非常に手間がかかり、現実的には全社員の管理は困難

システムによる自動管理

勤怠管理システムの中には、勤務間インターバル管理機能を搭載した製品が増えており、以下のような機能を持ちます。

機能内容
自動チェック打刻時に前日の終業時刻を参照し、インターバル不足ならエラー表示
管理者アラート管理画面でインターバル未達者を一覧表示
始業制限強制的に打刻できない設定や、確認申請が必要なフローを設計可能
勤務インターバルレポート月次や社員別でのインターバル状況のレポート出力

制度の定着・違反防止・証跡管理を効率よく実現可能になります。

勤務間インターバル制度に対応した勤怠管理ツール5選

ツール名対応度インターバル管理機能コメント
KING OF TIMEアラート・強制ブロック・レポート対応大手企業にも多数導入実績
ジョブカン勤怠管理始業前打刻アラート、履歴管理ありコスパ重視の中小企業向け
AKASHI条件付きでインターバル計算可能柔軟なカスタマイズが可能
Touch On Timeインターバル時間の自動計算可機能制限ありだが基本に対応
MITERAS勤怠勤務間インターバルレポートあり人事連携にも強いクラウド製品

※機能詳細は各公式サイトをご確認ください。

選定のポイント

  • 「打刻制限」だけでなく「アラート通知」があるか
  • 勤怠データと連動したレポートが出力可能か
  • 無理なルールではなく、現場とのバランスを取れる設計か

導入に向けたステップと社内対応

1. インターバルルールの設計

 → 何時間に設定するか(9時間、11時間など)、免除条件、対象者の範囲を明確化

2. 就業規則の改訂

 → 法的に労使間の同意が必要。労基署への届出も忘れずに。

3. 勤怠管理システムの選定と設定

 → インターバル時間・制限内容・アラート方法をカスタマイズ

4. 従業員への説明・教育

 → 制度の意義とルールを共有し、現場の理解を促進

5. 月次チェックとレポート分析

 → 未達者の傾向を把握し、業務設計や人員配置の見直しに活用

制度の目的は「罰すること」ではなく、「働きすぎを防ぎ、持続可能な働き方を設計すること」にあります。

勤務間インターバル制度に活用できる助成金制度

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進コース)

  • 制度導入にかかるコンサル費用・システム導入費用を最大で100万円補助
  • 勤務間インターバル制度の導入が要件の1つ
  • 中小企業が対象(従業員数300名以下など)
  • 支給申請には、労働時間実績の比較資料が必要

※年度ごとに公募要件や上限額が変動するため、厚労省または委託機関の公式HPを必ず確認してください。

勤務間インターバル管理の成功事例

ケース1:IT企業(社員数100名)

課題:繁忙期の連続残業が常態化し、メンタル不調者が増加

対策:11時間の勤務間インターバル制度を導入、打刻制限付き

効果:制度導入後、長時間労働が月平均15%減少。人事部の離職相談件数も半減


ケース2:飲食チェーン(パート含む300名)

課題:シフト制勤務でインターバル不足者が多発し、助成金申請に支障

対策:Touch On Time導入でインターバル自動集計、週次レポート管理を開始

効果:6ヶ月でインターバル未達者が7割減、助成金100万円の支給決定

まとめ

勤務間インターバル制度は、これからの企業経営において「持続可能な働き方」の鍵となる取り組みです。単なる制度義務ではなく、従業員の健康を守り、労務トラブルを未然に防ぐリスク管理の要でもあります。

導入にあたっては、「就業規則整備」「システムの導入」「従業員教育」「レポートによる運用改善」まで、段階的かつ丁寧な対応が欠かせません。

そして、勤怠管理システムとの連携により、ルールを守りながらも現場の柔軟性を確保する設計が実現可能になります。

「働きやすさ」と「企業責任」を両立するために、今こそインターバル管理の見直しと整備に着手しましょう。

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