システム開発 アジャイル【2026年版】進め方と契約の注意点

目次

はじめに

システム開発でアジャイルを検討するとき、「早く作れる手法」とだけ理解すると失敗します。アジャイルは計画をなくす方法ではなく、短い周期で仮説を検証し、利用者の反応を見ながら価値を高める進め方です。要件が変わりやすい新規サービス、業務システムの改善、社内DX、ノーコードでのMVP開発では効果を出しやすい一方、契約、意思決定、レビュー体制が曖昧なままだと混乱します。

アジャイルの出発点は、2001年に発表されたアジャイルソフトウェア開発宣言です。この価値観は2026年のいまも土台として使われていますが、実務ではそれだけでは足りません。スクラムの公式ルールであるScrum Guideは2020年版が現行で、外部委託の契約についてはIPAがアジャイル開発版のモデル契約を公開し、2025年4月にも解説を追記しています。

また、導入判断は開発チームだけで完結しません。経営、現場責任者、利用者、外部ベンダーが同じ目的を見て、優先順位を更新できる状態を作ることが前提です。レビューに誰も判断者が出てこない体制では、どれだけ短いサイクルで作っても方向修正ができず、アジャイルの利点が消えてしまいます。

この記事では、アジャイル開発の基本、ウォーターフォールとの違い、メリットとデメリット、スクラムとカンバン、進め方の手順、失敗パターン、向き不向き、外部委託時の契約・要件定義の注意点を順に整理します。開発会社に相談する前に、どの範囲を固定し、どの範囲を反復改善するかを決める判断材料として使ってください。

アジャイル開発とは?2026年時点の基本

アジャイル開発チームの打ち合わせ

アジャイル開発は、短い期間で動く成果物を作り、利用者や関係者のフィードバックを受けながら改善する開発手法です。システム開発にアジャイルを取り入れるときは、全機能を一度に作るのではなく、価値の高い機能から順に作って確かめます。

土台になっているアジャイルソフトウェア開発宣言は、次の4つの価値を示しています。右側の項目にも価値があると認めたうえで、左側により価値を置くという書き方で、文書や計画を不要とするものではありません。

より価値を置くもの価値は認めつつ優先度を下げるもの
個人と対話プロセスやツール
動くソフトウェア包括的なドキュメント
顧客との協調契約交渉
変化への対応計画に従うこと

具体的な進め方として最も使われているのがスクラムです。公式のScrum Guideは2020年11月版が現行です。2025年6月には共同考案者のJeff Sutherland氏らが補足資料「Scrum Guide Expansion Pack」を公開しましたが、これは2020年版を置き換えるものではありません。

ウォーターフォールとの違いと向いている案件

開発計画を書いたホワイトボード

ウォーターフォールは、要件定義、設計、実装、テスト、リリースを順番に進めます。業務ルールが固まっていて変更が少なく、稟議や監査に耐える文書が必要な案件に向いています。アジャイルは最初から全仕様を固定せず、重要な機能から試して改善します。

比較軸アジャイルウォーターフォール
進め方短いスプリントを繰り返す要件定義→設計→実装→テストの順
要件変化を前提に優先順位を更新初期に固める
フィードバックスプリントごとに受ける主に完成後に受ける
リリース段階的にリリースできる一括リリースが基本
向く案件新規サービス、MVP、業務改善要件が安定した基幹系、法令対応
注意点意思決定者の参加が必要後半の仕様変更は手戻りが大きい

どちらが優れているかではなく、変更の多さ、利用者確認の頻度、契約形態で選びます。業務システム全体を一括で作る前に、申請、予約、在庫確認など一部機能だけを先に試すなら、アジャイルが向いています。

アジャイル開発のメリット

アジャイルの利点は、作りながら判断を修正できることです。主なメリットは次の4つです。

  1. リスクを早く見つけられる: 小さな単位で作ってテストするため、不具合や仕様の誤解がスプリントごとに表に出ます
  2. 利用者のニーズに合わせやすい: レビューで実際の画面を見てもらい、次に作るものを決め直せます
  3. 価値の高い機能から使い始められる: 全機能の完成を待たずに、優先度の高い機能を先にリリースできます
  4. チームが進め方を改善し続けられる: 振り返りを毎回行うため、会議や手順の無駄が溜まりにくくなります

こうしたメリットを活かすために基本的な考え方や進め方も押さえたい方は、「アジャイル開発とは?メリット・デメリットから進め方まで初心者向けに解説」をご覧ください。

アジャイル開発のデメリットと対策

課題を整理するタスクボード

一方で、柔軟さが裏目に出ることもあります。代表的なデメリットと対策を整理します。

デメリット起きること対策
仕様が固まらないまま進む要望が増え続け、完成の基準がぶれるプロダクトゴールと完成の定義を先に決める
ドキュメントが不足しやすい引き継ぎや保守で仕様が分からなくなる権限、データ項目、外部連携は必ず文書に残す
関係者の参加負荷が高いレビューに出られず判断が止まる承認者とレビュー日程を契約前に固定する
スキル差が出やすい自律的に動けるメンバーが少ないと混乱するスクラムマスター役を置き、最初は短いスプリントで慣らす
総額が見えにくい予算の上限を超えるおそれがある予算上限とスプリント数の目安を決め、途中で優先度を削る

仕様書だけ渡して任せる発注には向きません。Nocoderiでは、最初に業務フロー、権限、データ項目を整理して文書に残し、そのうえでBubbleの画面を見ながらレビューする形で、この負荷を抑えています。

主要な手法:スクラムとカンバン

アジャイルには複数の実践手法があり、代表的なのがスクラムとカンバンです。

比較軸スクラムカンバン
仕事の区切り1か月以内の固定期間(スプリント)期間で区切らず流れで管理
役割プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者決まった役割はない
中心になる道具プロダクトバックログ、スプリントバックログワークフローを可視化したボード
重視する指標スプリントゴールの達成、完成の定義仕掛かり作業数(WIP)、サイクルタイム
向く場面新機能を計画的に作る開発問い合わせ対応や改修が次々来る保守運用

カンバンの公式定義はThe Kanban Guideにまとまっています。新規開発はスクラムで進め、リリース後の改修はカンバンに切り替えるといった使い分けも一般的です。

スクラムで進める実務ステップ

スプリントレビューで画面を確認する様子

Scrum Guide 2020年版に沿うと、スクラムは次の流れを繰り返します。

  1. プロダクトゴールとバックログを作る: 解決する業務課題と成功の指標を決め、作る候補を優先順位付きで並べます
  2. スプリントプランニング: 次のスプリントで何を完成させるか(スプリントゴール)を決めます。1か月のスプリントなら最大8時間です
  3. スプリントの実施: 期間は1か月以内で、実務では1〜2週間に設定するチームが多いです
  4. デイリースクラム: 開発者が15分で進捗と障害を確認し、その日の計画を調整します
  5. スプリントレビュー: 動く成果物を利用者や責任者が確認し、次の優先順位を決めます
  6. スプリントレトロスペクティブ: チームの進め方を振り返り、次のスプリントの改善点を決めます

プロダクトオーナーは要望をすべて受け入れる人ではなく、売上、業務効率、保守負荷を見て並べ替える責任者です。レビューに意思決定できる人が参加しないスクラムは、単なる小分け開発になりやすいです。MVPとスクラムの組み合わせ方はMVP開発×スクラムの実践戦略でも解説しています。

アジャイル導入を成功させるポイントと失敗パターン

アジャイルを成功させるには、手法よりも組織の関わり方が効きます。押さえておきたいポイントは次の3つです。

  • 経営層の理解と支援: 予算や優先順位を途中で見直すことを、経営側が認めている
  • スクラムマスターの存在: 障害を取り除き、チームが自分たちで判断できるよう支える人がいる
  • 振り返りを続ける文化: レトロスペクティブで決めた改善を、次のスプリントで実際に試す

よくある失敗と対処法は次のとおりです。

失敗パターン対処法
仕様変更が頻繁すぎて混乱する変更はバックログに積み、スプリント中の割り込みは原則しない
ミーティングが多く開発時間が減るScrum Guideのタイムボックスを守り、目的のない定例をやめる
成果物が見えにくい毎スプリントのレビューで動く画面を見せる
レビューで決められない承認者を1人決め、代理の判断範囲も決めておく
会議名だけまねて中身が変わらない完成の定義を決め、終わったかどうかを毎回判定する

アジャイルに向いている組織・向いていないケース

向き不向きは業種や会社の規模ではなく、意思決定の速さと契約の形で決まります。政府情報システムでも、デジタル庁が標準ガイドラインの参考文書としてアジャイル開発実践ガイドブック(DS-121、2021年3月策定)を掲載しています。

向いている向いていない
少人数で、担当者が自分で判断できるチーム決裁に何週間もかかり、レビューで結論が出ない組織
リリース後も改善を続けるサービスや業務システム一度作ったら変更しない前提のシステム
利用者に画面を見せて意見をもらえる利用者や現場責任者がレビューに参加できない
予算枠の中で優先度を入れ替えられる契約完成責任を負う一括請負のまま、進め方だけアジャイルにする

外部委託時の契約・要件定義の注意点

開発委託の契約を確認する打ち合わせ

アジャイルを外部委託するなら、契約の考え方を先に合わせます。固定価格で全機能を約束しながら進め方だけアジャイルにすると、変更の扱いで揉めやすくなります。

IPAの情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)は2020年3月に公開され、2025年4月8日に国際仲裁の解説を追記してダウンロードファイルが差し替えられました。アジャイル開発外部委託モデル契約(解説付き)、契約前チェックリスト、アジャイル開発進め方の指針がまとまっています。

契約前に決めること決めておく内容
固定する範囲プロダクトゴール、予算上限、契約期間
変えてよい範囲機能の優先順位、画面の細部
レビュー頻度、参加者、承認者
完成と検収完成の定義、スプリントごとの確認方法
追加要望どの予算枠で扱うか、何を削って入れるか

要件定義では、全画面の細部よりも、業務目的、利用者、権限、データ、外部連携、変更判断のルールを明確にします。動く画面を使って要件を固める考え方は要件定義を「動くもの」から始める方法で紹介しています。

Nocoderiでアジャイル型の開発を進める場合

Nocoderiでは、初回に業務フロー、権限、画面、データ項目、外部連携を整理し、まずBubbleでMVPを作って利用者に確認してもらいます。予約、問い合わせ、申請、顧客管理などは入力項目と権限を絞ると短いサイクルで検証でき、不要な機能を削って必要な通知や一覧を足していけます。

まとめ

アジャイル開発は、2001年のアジャイルソフトウェア開発宣言を起点に広がった考え方です。2026年の実務では、宣言の価値観に加えて、Scrum Guide 2020年版に沿ったプロダクトゴール、バックログ、スプリント、レビュー、レトロスペクティブの運用が欠かせません。継続的な改修が中心ならカンバンも選択肢になります。

ウォーターフォールは要件が安定した案件に向き、アジャイルは変化が多く、利用者の反応を見ながら改善したい案件に向きます。リスクを早く見つけられる、価値の高い機能から使えるといったメリットがある一方、仕様がぶれる、関係者の負荷が高い、総額が見えにくいといったデメリットもあります。向き不向きは会社の規模ではなく、意思決定の速さと契約の形で決まります。

外部委託では、IPAのモデル契約や契約前チェックリストを参考に、固定する範囲と変えてよい範囲、レビュー頻度、承認者、予算上限、検収の方法を契約前に決めておくと、開発会社との認識違いを減らせます。アジャイルだから仕様書が不要になるわけではなく、権限やデータ項目のように後から変えにくい部分ほど文書に残す必要があります。

Nocoderiに相談する場合は、作りたいシステムの目的、利用者、現在の業務フロー、困っている手作業、最初に検証したい機能、利用者数、必要な権限、外部連携、希望納期を整理しておくと、アジャイル型、ウォーターフォール型、ノーコードMVPのどれで始めるべきかを判断しやすくなります。必須機能と後回しにできる機能を分けておくと、最初のスプリントの成功基準も決めやすくなります。

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