勤怠システムのセキュリティ強化|データ保護と不正アクセス対策の徹底ガイド
はじめに
勤怠管理システムは、従業員の労働時間、出退勤、休暇申請などのデータを扱う、企業の業務に欠かせないツールです。一方で、個人情報や給与計算に使う機密データを扱うため、セキュリティ対策が不十分だと、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。従業員や取引先からの信頼を守るうえで、勤怠システムのセキュリティは重要な検討項目です。本記事では、勤怠システムで想定されるリスクと、導入時に確認したいセキュリティ機能を解説します。
勤怠システムに求められるセキュリティの基本
勤怠システムにおけるセキュリティ対策は、主に以下の3つの領域に分けられます。
- データ保護:従業員の個人情報や勤怠データの暗号化と安全な保管。
- アクセス管理:システムへの不正アクセスを防止し、必要な人だけがデータにアクセスできるようにする。
- 監査・ログ管理:システムの使用状況を追跡し、異常な動きを検知できる仕組みを提供。
これらの領域を組み合わせて強化することで、勤怠システムのセキュリティリスクを下げられます。ただし、勤怠システムのセキュリティ機能は、製品やプラン、オプションの契約状況によって使える範囲が異なります。管理者だけが対象の機能もあるため、導入前に公式資料やセキュリティチェックシートで対象範囲を確認しておきましょう。
勤怠システムのセキュリティリスクとは?
勤怠システムがセキュリティに関して脆弱である場合、以下のようなリスクが発生します。
1. 個人情報漏洩
勤怠システムには、従業員の名前、勤務時間、休暇情報に加え、登録内容によっては住所や給与計算に関わる情報も含まれます。これらの情報が外部に漏れた場合、プライバシー侵害や社会的信用の低下につながる可能性があります。
漏えいが起きた場合の法的な対応も押さえておく必要があります。個人情報保護委員会によると、要配慮個人情報を含む漏えい、財産的被害が生じるおそれのある漏えい、不正アクセスやランサムウェアなど不正の目的による漏えい、本人の数が1,000人を超える漏えいなどに該当すると、委員会への報告が義務付けられています。報告は、発覚日から3〜5日以内の速報と、30日以内(不正の目的による場合は60日以内)の確報の2段階です。勤怠データでも、ログインIDとパスワードの組み合わせなどが漏れれば報告対象になり得るため、発覚時の連絡体制を事前に決めておきましょう。
(出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」、2026年10月3日確認)
2. 不正アクセス
不正なアクセスにより、第三者がシステムにログインし、勤怠データを改ざんしたり、情報を盗み出したりするリスクがあります。特に、パスワードが推測されやすい場合や多要素認証を利用していない場合、攻撃者にログインされるおそれが高まります。
3. サイバー攻撃
フィッシング攻撃やマルウェア感染などのサイバー攻撃によって、勤怠システムが乗っ取られる危険性があります。企業の労務データや財務データがサイバー犯罪者の手に渡ると、金銭的損失や企業の信用問題を引き起こします。
IPA(情報処理推進機構)が2026年1月29日に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編では、1位が「ランサム攻撃による被害」、2位が「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」でした。クラウド型の勤怠システムを使う場合も、自社の端末やアカウントの管理に加え、提供元や連携先の管理体制を確認しておくことが大切です。
(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」を決定、2026年10月3日確認)
4. データ改ざん
勤務時間や休暇情報を不正に変更されることで、給与計算に誤りが生じることがあります。これにより、従業員の不満や労働トラブルが発生し、法的問題に発展する可能性もあります。
勤怠データを給与ソフトや社内システムへ自動で連携すると、連携の経路も改ざんや不正送信の入口になり得ます。連携の仕組みを自社で作るか外注するかは、送信元の確認やエラー時の再送まで含めた費用で判断すると、後からの手戻りを減らせます。勤怠の承認結果を他のツールへつなぐ方法と、署名検証などの注意点はWebhookで勤怠・フォーム・CRMをつなぐ業務自動化の実装例で紹介しています。
勤怠システムのセキュリティ対策の実施方法
1. データの暗号化とバックアップ
勤怠システムでは、データ(特に個人情報や給与データ)を暗号化して保存することが求められます。データを暗号化しておけば、万が一システムが外部から攻撃されても、データを不正に読み取られにくくなります。
- SSL/TLSによる通信の暗号化:勤怠データのやり取り時には、SSL/TLSを使用して通信を暗号化し、インターネットを通じて送信されるデータを保護します。
- データベースの暗号化:システム内でデータを保存する際、AES(Advanced Encryption Standard)などの暗号化方式を使って保護します。
さらに、データの定期的なバックアップを行い、万が一のデータ消失や破損に備えます。バックアップは物理的に異なる場所やクラウドに保存することで、災害時やシステム障害時にもデータを復元しやすくなります。
2. アクセス制御と認証強化
不正アクセスを防ぐために、勤怠システムには適切なアクセス制御と認証機能が必要です。これには、以下の方法があります。
- 多要素認証(MFA):ユーザーがログインする際、パスワードだけでなく、生体認証やワンタイムパスワード(OTP)など、追加の認証方法を使用することで、セキュリティを強化します。
- ロールベースのアクセス制御:システムにアクセスできるユーザーを、必要最低限に制限します。例えば、管理者だけが勤怠データの修正や設定変更を行えるようにし、一般社員は自分の勤怠情報のみを閲覧・申請できるようにします。
- IP制限:企業ネットワークからのアクセスのみ許可し、外部からの不正アクセスを制限することができます。製品によっては管理者のログインだけが対象になるため、従業員の打刻画面まで制限したい場合は対応範囲を確認しておきます。
3. セキュリティパッチの適用と脆弱性対策
勤怠システムが使用するサーバーやソフトウェアにセキュリティホールがないかを定期的にチェックし、最新のセキュリティパッチを適用することが重要です。これにより、サイバー攻撃によるリスクを下げられます。また、システムのソースコードに脆弱性が見つかった場合には、速やかに修正を行い、セキュリティ強化を図ります。
4. ログ監視と監査機能
ログ監視と監査機能は、不正の早期発見に役立ちます。システム操作をログとして記録し、定期的に監査を行うことで、不正行為や不審なアクセスに気づきやすくなります。
- ログ監視:ユーザーのログイン履歴や操作履歴を記録し、不正アクセスの兆候を検出します。例えば、通常の勤務時間外にシステムにアクセスした場合や、大量のデータダウンロードが行われた場合にはアラートを発信します。
- 定期的な監査:管理者は、定期的にシステムログを確認し、アクセス権限の不正変更や不正操作がないかをチェックします。
5. 教育と研修
従業員のセキュリティ意識を高めるため、セキュリティ教育と研修を実施することも重要です。特に、パスワードの管理やフィッシングメールへの対応方法など、日常的に起こり得るセキュリティリスクを周知しておくことが、情報漏洩や不正アクセスの予防につながります。
セキュリティ対策を実施するためのおすすめ勤怠システム
多くの勤怠システムには、セキュリティ機能が組み込まれています。以下は、公式サイトでセキュリティ機能を確認できる主な製品です。記載は各社の公式ページの内容に基づき、2026年10月3日時点で確認しました。
| システム名 | 特徴 | セキュリティ機能(公式ページの記載) |
|---|---|---|
| SmartHR | 人事・労務クラウドで、勤怠管理も機能として提供 | 2要素認証、IPアドレス制限、操作ログの閲覧、シングルサインオン、SSL/TLSによる通信暗号化、データの暗号化。ISO/IEC 27001を取得 |
| KING OF TIME | クラウド型の勤怠管理システム | 二段階認証やSAML認証、ログイン失敗の回数制限、通信の暗号化、暗号化したバックアップと複数データセンターでの保管、年1回の第三者による脆弱性診断。ISMS認証とプライバシーマークを取得 |
| ジョブカン勤怠管理 | クラウド型の勤怠管理システム | アプリまたはメールによる2要素認証、IP制限、TLS1.2以上の通信暗号化、個人情報を含むデータの暗号化保存、専門会社による定期的な脆弱性診断。ISO 27001・27017を取得 |
| TimePro-VG(アマノ) | クラウド・オンプレミスの両方に対応し、中堅〜大手企業向け | 操作権限のレベル設定。ISMS認証(ISO27001)とISMSクラウドセキュリティ認証(ISO27017)を取得 |
出典(いずれも2026年10月3日確認):
同じ「二要素認証」「IP制限」でも、対象が管理者だけか従業員まで含むか、オプション契約が必要かは製品によって異なります。表は公式ページに書かれている範囲をまとめたもので、製品の優劣を示すものではありません。導入前には、各社のセキュリティチェックシートや営業窓口で、自社が必要とする機能の対象範囲を確認しましょう。
まとめ
勤怠システムのセキュリティ対策は、企業にとって重要な検討項目です。情報漏洩や不正アクセスを防ぐには、データの暗号化、アクセス管理、多要素認証、監査機能を組み合わせることが有効です。また、定期的なセキュリティパッチの適用と従業員のセキュリティ教育も欠かせません。漏えいが起きた場合の報告義務も踏まえ、発覚時の体制まで決めておくと、コンプライアンス上のリスクを下げられます。勤怠システムの導入を検討する際は、これらのポイントを押さえたうえで、自社の運用に合うシステムを選びましょう。
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