IT予算の立て方|費目の分類・配分の考え方と見直し手順

IT予算を立てる基本は、「業務を維持するための費用」と「業務を変えるための投資」を分けて組むことです。

維持費(既存システムの利用料・保守・通信など)は前年実績から積み上げ、投資(新規開発・置き換え・効率化)は経営の優先順位から配分します。

この2つを混ぜたまま総額だけで議論すると、削ってはいけない維持費を削ったり、投資の判断が先送りになったりします。

本記事では、費目の分類、年間予算を組む手順、期中の見直し方を、中小企業のIT・管理部門の担当者向けに解説します。

なお、IT予算の売上高比率などの統計・相場の数値は本記事では扱いません。自社の予算は、統計との比較ではなく、自社の業務と計画から積み上げることを前提にしています。

目次

IT予算の費目を分類する

最初に、現在のIT関連の支出をすべて書き出し、次のように分類します。

分類含まれる費目の例予算上の扱い
維持費(ラン)クラウド・SaaSの利用料、保守契約、ライセンス更新、通信費、ドメイン・サーバー前年実績+契約更新の増減で積み上げ
投資(チェンジ)新規開発、システムの置き換え、業務効率化、セキュリティ強化案件ごとに目的・効果・概算を付けて申請
人・体制情報システム担当の人件費、外部委託、教育維持と投資のどちらを担うかを明記
予備費障害対応、緊急の法令・制度対応、価格改定最初から枠として確保

分類のコツは、請求書・クレジットカード明細・稟議記録から実際の支出を拾うことです。部署ごとに契約したSaaSや、担当者しか知らないツールなど、把握されていないIT支出はどの会社にもあります。予算編成は、この棚卸しの機会でもあります。

年間予算を組む手順

手順は5つです。第1に、前述の棚卸しで現状の支出一覧を作ります。第2に、維持費の来期見込みを作ります。契約更新のタイミング、値上げの通知、利用人数の増減を反映してください。第3に、投資候補を一覧にし、それぞれに目的(何の業務がどう変わるか)と概算を付けます。概算の作り方はシステム開発費用の内訳が参考になります。第4に、経営の優先順位で投資候補を並べ、予算枠に収まる範囲で採否を決めます。第5に、予備費を確保して総額を確定します。

また、単年度と複数年の視点を分けて持ちます。PCの入れ替えや基幹システムの更改のような大型の支出は単年度に収まらないため、精度は粗くてよいので3年程度の見取り図を作り、大型出費の年が重ならないよう平準化します。

投資候補の並べ方に迷う場合は、個別のツール導入の積み上げではなく、システム全体の将来像から逆算する方法があります。

維持費を見直す。サブスクと保守の棚卸し

維持費は毎年自動更新されがちですが、年に1度の見直しで削減余地が見つかることが多い領域です。確認する順序は次の通りです。

まず、利用実態です。契約アカウント数と実際の利用者数のずれ、ほぼ使われていないツールの重複(同じ用途のサービスを部署別に契約しているなど)を確認します。次に、プランの適合です。上位プランの機能を使っていないなら下位プランへの変更を検討します。最後に、保守契約の範囲です。何が含まれ、何がスポット料金なのかを確認し、実際の依頼実績と照らします。保守費の見方は保守費用の考え方で詳しく整理しています。

解約を決めたサービスについては、解約手続きの期限(更新の何日前までか)と、データの取り出し方法・形式を先に確認します。取り出しを済ませる前に契約が切れると、過去データを失うか、復旧のための追加費用が発生します。

注意点として、維持費の削減は「やめても業務が止まらないか」の確認とセットで行ってください。窓口の削減や保守レベルの引き下げは、障害時の復旧時間に跳ね返ります。

投資の判断。効果の書き方と補助金の位置づけ

投資案件の申請では、効果を「削減できる作業時間」や「防げるミス・機会損失」のように、業務の言葉で書きます。金額換算が難しい効果(属人化の解消、引き継ぎやすさ)は、無理に金額にせず、リスクとして記述する方が判断を誤らせません。

申請の書式は、目的(何の業務がどう変わるか)、対象業務と関係者、概算と根拠、導入後の運用費見込み、やらない場合に続くリスク、の5項目をそろえると、判断する側が比較できます。効果の数字を作文するより、「やらない場合のリスク」を具体的に書く方が、判断の質が上がります。

補助金は、投資の優先順位を変えないことが原則です。補助金があるから導入するのではなく、やると決めた投資の負担を軽くする位置づけで使います。制度の概要や対象はAI導入に使える補助金の考え方を参照し、申請時は必ず公募要領の最新版を確認してください。本記事では制度の金額・要件には触れません。

期中の見直しは、四半期に1度、投資案件の進捗と維持費の実績を確認する程度で十分です。大きな障害・制度変更があった場合は、予備費で対応し、翌期の予算に反映します。

初めてIT予算を作る会社の進め方

専任の情報システム担当がいない会社では、完璧な予算体系を目指すより、次の3歩から始めてください。

第1歩は、経理の支払データからIT関連の支出を抜き出すことです。通信費・支払手数料・消耗品費など複数の勘定科目に散らばっているため、「サービス名で拾う」つもりで探します。第2歩は、それを本文の表の4分類(維持費・投資・人と体制・予備費)に振り分けることです。第3歩は、来期にやりたいこと(困りごとの解消)を金額抜きでよいので一覧にすることです。

この3歩だけで、「うちのITに年間いくらかかっていて、何に困っているか」が言えるようになります。一覧は表計算ソフトで十分で、サービス名・月額・年額・契約更新月・担当者の5列があれば、来期からの見直しに使えます。金額の精度や比率の議論は、その後で十分です。

IT予算に関するFAQ

IT予算は売上の何%が適正ですか?

本記事では業界統計の数値は扱いません。比率は業種・事業モデル・システムへの依存度で大きく異なるため、他社比率より、自社の維持費の内訳と投資の優先順位から積み上げることを勧めます。統計を参照する場合も、調査の対象と定義を確認してから使ってください。

維持費と投資の割合はどう考えればよいですか?

まず維持費を正確に把握することが先です。維持費が把握できると、残りの枠で何に投資できるかが見え、「維持費を下げて投資に回す」という具体的な議論ができるようになります。割合の目標値を先に決めるより、棚卸しから始めてください。

予備費はどのくらい持つべきですか?

一律の基準は示せませんが、ゼロにしないことが重要です。障害対応・法令対応・価格改定は毎年どれかが起こるためです。過去2〜3年で予定外に発生したIT支出を振り返り、それを目安に枠を決める方法が現実的です。

予算計画と開発計画をあわせて相談できます

ノーコード総研では、ノーコードやAIを活用した業務システムの受託開発をご相談いただけます。「来期のIT予算にどの開発をいくらで載せるべきか」という段階から、対象業務の整理と概算の作成を一緒に進められます。

まずは現在のIT支出の一覧と、来期にやりたいことを書き出して、ノーコード総研に相談することから始めてみてください。

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