警備業の契約書面は電子化できる?警備業法の要件と手順

警備業法は、警備業者に対し、契約の前後で依頼者への書面の交付を義務づけています(19条1項・2項)。

同時に、19条3項は、依頼者の承諾を得たうえで、書面に記載すべき事項を情報通信技術を利用する方法で提供できると定めており、この場合は書面を交付したものとみなされます。

つまり、警備業務の契約書面の電子化は法律上の道が用意されており、鍵になるのは「依頼者の承諾」と「定められた方法によること」の2点です。

本記事では、条文の構造と、電子化を進める実務手順を警備業の経営・管理部門向けに解説します。

出典:e-Gov法令検索・警備業法(2026年9月25日確認)。本記事は一般的な情報の整理であり、個別の運用の適法性は行政書士・弁護士等の専門家や所轄の警察への確認が必要です。

目次

警備業法19条の構造。何が義務づけられているか

19条が定める書面は2種類あります。

書面条文内容
契約前の書面19条1項契約を締結しようとするとき、契約の概要について記載した書面を交付
契約後の書面19条2項契約を締結したとき、警備業務の内容、対価・支払額、支払の時期と方法、業務の期間、契約解除に関する事項などを明らかにする書面を遅滞なく交付

そして19条3項が電子化の根拠です。条文は、政令で定めるところにより依頼者の承諾を得て、書面に記載すべき事項を「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるもの」により提供できるとし、この場合、警備業者は書面を交付したものとみなすと定めています。e-Gov・警備業法19条(2026年9月25日確認)。

重要なのは、電子化しても「交付すべき事項」そのものは変わらないことです。電子化は交付の手段の話であり、記載事項の省略を認めるものではありません。まず自社の書面が2項の記載事項を満たしているかを確認し、そのうえで提供手段の電子化を検討する、という順序で考えてください。

電子化の前提条件。承諾と方法の2つを確認する

第一の前提は、依頼者の承諾です。条文上、電磁的方法による提供は依頼者の承諾を得て行うものとされています。実務では、承諾を「いつ・誰から・どの方法について」得たかを記録に残すことが重要です。口頭の合意だけでは、後から確認できません。承諾の取得方法や様式の要件は政令・内閣府令side規定されるため、最新の施行規則と警察庁の資料で確認してください。

また、承諾は一度取れば終わりではありません。依頼者から「やはり紙に戻したい」と言われた場合に紙の交付へ戻す手順と、その記録の残し方も決めておくと、運用が止まりません。

第二の前提は、提供の方法が内閣府令で定めるものに該当することです。本記事では該当条文(施行規則)の個別の要件までは確認していないため、具体的にどの方式(電子メール、ダウンロード提供など)がどの条件で認められるかは、警備業法施行規則の現行条文と、所轄警察・専門家への確認で判断してください。ここを自己判断で進めないことが、後戻りを防ぎます。

電子化を進める実務手順

手順は5つに分けられます。

第1に、現状の書面の棚卸しです。契約前書面・契約後書面のテンプレートを集め、記載事項が現行の法令・内閣府令の要求を満たしているかを先に点検します。紙の時点で記載漏れがある書面を電子化しても、問題が電子化されるだけです。あわせて、記載事項の要件は法令・内閣府令の改正で変わり得るため、テンプレートの更新責任者と、年1回の点検タイミングを決めておきます。

第2に、対象の選定です。新規契約から始めるか、既存契約の更新時に切り替えるか、依頼者の属性(法人・個人)ごとの進め方を決めます。

第3に、承諾フローの設計です。承諾の取得方法、記録の保存場所、承諾を得られなかった依頼者への紙運用の継続手順を決めます。電子と紙の二重運用期間が必ず発生する前提で設計してください。

第4に、システムの選定です。確認すべきは、提供方法が要件を満たせるか、提供・閲覧の記録が残るか、契約データと顧客情報をどう管理するかです。契約書面の管理台帳をExcelで続けるかどうかの判断は、エクセル顧客管理の限界と移行の考え方が参考になります。

第5に、既存契約と紙書面の扱いです。切り替えの案内文、既存の紙書面の保管方法と期間、電子へ切り替えた後の原本の扱いを社内規程として決めます。

第6に、社内教育と開始後の点検です。現場の営業担当が承諾の取得を省略しないよう、手順書と確認の仕組みを用意します。

あわせて進めたい周辺業務のデジタル化

契約書面の電子化は、単独で行うより、周辺の業務と合わせて設計すると効果が出やすくなります。警備業では、隊員の勤怠・上番下番の管理、契約ごとの配置管理、請求までの流れが契約情報とつながっているためです。紙の記録からの移行の考え方はタイムカードのデジタル化と移行の注意点も参照してください。

運用面では、現場の営業担当が依頼者に電子提供を説明するためのトークと資料を用意しておくことも重要です。承諾は依頼者の理解が前提であり、説明がばらつくと承諾の取得率も記録の質もばらつきます。高齢の依頼者や電子環境のない依頼者には無理に切り替えず、紙運用を続ける判断を現場に許可しておいてください。

また、書面の電子化にあたって外部へシステム構築を依頼する場合は、契約の型(請負か準委任か)と成果物の扱いを整理しておくと、見積もり比較がしやすくなります。準委任契約の成果物と検収の実務とシステム開発費用の内訳で考え方を整理しています。

警備業の契約電子化に関するFAQ

依頼者の承諾なしに電子交付へ切り替えられますか?

できません。警備業法19条3項は、依頼者の承諾を得て電磁的方法により提供できると定めています。承諾を得られない依頼者には従来どおり書面を交付する運用を残す必要があります。承諾の取得状況を契約台帳で管理し、誰が電子・誰が紙かを一覧できる状態にしておくと、交付漏れを防げます。e-Gov・警備業法(2026年9月25日確認)。

電子メールで契約書面のPDFを送れば要件を満たしますか?

方法の適否は、内閣府令で定める方法に該当するかによります。本記事では施行規則の個別要件まで確認していないため断定しません。警備業法施行規則の現行条文を確認し、判断に迷う場合は所轄の警察や専門家に確認してください。

一般的な電子契約サービスを導入すれば対応できますか?

電子契約サービスの機能と、警備業法上の書面交付・電磁的提供の要件は別の話です。契約の締結(電子署名)と、19条の書面(概要書面・契約後書面)の提供は場面が異なるため、どの書面をどの仕組みで提供するかを対応表にして確認してください。サービス選定の前に、自社が交付すべき書面と記載事項、承諾の取得・記録の方法を整理し、その要件を満たせるかをサービス側に確認する順序を勧めます。

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