管理会計システムに役立つテンプレート一覧と活用ガイド【実務で使えるフォーマット解説】

目次

はじめに

管理会計の精度とスピードを高めるうえで、「テンプレートの活用」は非常に効果的です。導入初期の段階で最も多い課題の1つが、「そもそもどんなフォーマットで何を管理すればよいのかがわからない」ということです。

管理会計は企業ごとに目的や分析軸が異なるため、完全に汎用的な設計は難しい面もあります。しかし、初期の運用定着においては“参考となるテンプレート”をもとにスタートすることで、大幅に設計工数を削減しつつ、精度の高い集計が可能となります。

本記事では、実務で活用できる管理会計のテンプレート(予算、予実、部門別損益、KPIダッシュボードなど)の種類と活用ポイントを詳しく解説します。自社に合った管理会計体制の構築にぜひお役立てください。


管理会計におけるテンプレートの役割とは?

テンプレートとは、あらかじめ定型化された入力・集計フォーマットのことを指します。これを活用することで、以下のようなメリットが得られます。

1. 設計工数の削減

管理会計を一から構築しようとすると、損益項目の定義、KPIの設定、部門コードの整理など、膨大な初期設計が必要になります。テンプレートを使うことで、そのたたき台が整い、検討すべきポイントが明確になります。

2. データ整備の標準化

各部門で異なるExcel様式を使っていた場合、テンプレートを用いて統一することでデータの正確性と集計効率が格段に向上します。

3. 社内理解の促進

シンプルで見やすいテンプレートは、会計リテラシーの低い社員にも理解されやすく、「数字で考える文化」浸透の起点となります。

このように、テンプレートはシステム機能と同じくらい、運用の成功を左右する重要な要素なのです。


管理会計でよく使われる基本テンプレート一覧

実際に管理会計業務で活用されるテンプレートは多岐にわたります。以下に代表的なものをカテゴリ別に整理します。

テンプレート名主な目的使用場面
月次PLテンプレート損益の定期報告部門ごとの損益分析
予実管理テンプレート予算との差異を分析会議資料作成や進捗管理
KPIトラッキング表指標の推移を追跡週次・月次の数値レビュー
プロジェクト別収支表案件ごとの採算を管理受託・開発業に最適
原価配賦シート間接費の部門別按分部門別原価計算
経営ダッシュボード各種指標の一覧表示経営会議・報告用資料

これらのテンプレートはExcelやGoogleスプレッドシート形式での提供が主流ですが、最近ではBIツールや管理会計ソフトに組み込まれた形式で利用されるケースも増えています。


【実例付き】部門別損益テンプレートの構成と使い方

「部門別損益テンプレート」は、管理会計で最も基本かつ重要なフォーマットの1つです。以下のような構造で作成するのが一般的です。

テンプレート構成例:

項目営業部技術部管理部合計
売上高3,000,0003,000,000
変動費1,000,0001,000,000
粗利益2,000,0002,000,000
人件費500,000800,000300,0001,600,000
間接費100,000100,000100,000300,000
営業利益1,400,000-900,000-400,000100,000

活用ポイント:

  • 部門定義は「予算管理単位」に合わせてカスタマイズ
  • 人件費や間接費は配賦ルールを明確にしておく
  • 四半期ごとに損益構造を見直し、KPIと連動させると効果的

このテンプレートにより、「どの部門が利益を生んでいるか」「赤字部門は何がボトルネックか」を明確に把握でき、改善につなげやすくなります。


テンプレート導入時に必ず行うべき初期設定

テンプレートはあくまで“たたき台”です。自社に合わせてカスタマイズするために、以下の事前準備が欠かせません。

1. 部門コードと階層の整理

管理単位を明確に定義して、「営業部」「営業1課」「営業2課」などの階層構造を整理しましょう。

2. 勘定科目の標準化

会計システムとの連携や統一集計のためには、勘定科目コードや分類の標準化が必要です。

3. KPIの定義書を作成

たとえば「営業利益率」や「1人あたり売上高」などの算出式と目的を明文化しておくと、誤解なく指標が使われます。

4. データ更新フローの明確化

月次での入力担当者、締切日、データ確認者などを明確にしておくと、運用がスムーズに進みます。

これらの設定が曖昧なままだと、「テンプレートはあるけど使われていない」という状況に陥りがちです。


テンプレートの社内展開とトレーニングのすすめ方

テンプレートを全社に浸透させるには、単に配布するだけでは不十分です。教育と説明のプロセスを設けることで、活用率が飛躍的に向上します。

ステップ別の展開方法:

  1. 初回説明会を実施
     テンプレートの構造・目的・使い方をオンライン or 集合でレクチャー
  2. マニュアル・サンプルデータの提供
     実データを用いた入力例を配布。フォーマットだけでなく具体的な使い方を共有
  3. 現場ごとのOJT型トレーニング
     現場の実際のデータをもとに、入力・チェック方法を担当者に個別指導
  4. 定着度モニタリング
     入力完了率や提出率を毎月可視化し、未対応部署にフォローを実施

部門の数値に対する「納得感」を醸成するには、押し付け型ではなく“使うことで便利になる”体験を積んでもらうことが重要です。


テンプレートを管理会計システムと連携させる方法

テンプレートを最大限に活用するためには、会計システムやBIツールと連携させることが欠かせません。以下のような方法が一般的です。

Excelテンプレートとシステム連携の手段:

方法概要メリット
CSVアップロード月次で会計データをCSV形式で出力しテンプレートに反映汎用的・低コスト
API連携会計ソフトやERPと直接連携し、データを自動取得手間がかからず正確
BIツールへの取り込みPower BIやTableauにテンプレート構造を再現可視化・共有が容易

Loglassやマネーフォワードクラウドなど、一部の国産SaaS型システムは、あらかじめテンプレート構造を実装しているため、テンプレートを設計し直す必要がない場合もあります。


無料で使える管理会計テンプレート配布サイトまとめ

以下は、実務でそのまま使えるテンプレートを無料で入手できる代表的なサイトです。

サイト名提供テンプレート特徴
経営ハッカー(マネーフォワード)予実管理表、KPI表など実務で使いやすいシンプル設計
ナレッジラボManageboard形式のPL表スタートアップ向けの軽量テンプレートが多い
ミロク情報サービス月次損益表、原価配賦表中小企業向けでわかりやすい
株式会社ビズアップ管理会計入門Excel集多機能で応用しやすい形式多数
GoogleテンプレートギャラリーKPI表、会議用ダッシュボードクラウドで即編集可

これらをベースに、自社仕様にカスタマイズすることでコストを抑えた運用が可能です。


まとめ

管理会計システムの導入を成功させるには、「仕組み」だけでなく「使いやすさ」と「習慣化」が求められます。そのための第一歩が、優れたテンプレートを活用することです。

本記事では、部門別PLやKPI表、予実管理表など実務で役立つテンプレートを紹介しつつ、その活用方法と定着ステップまでを網羅的に解説しました。

テンプレートを活かして全社の“数字リテラシー”を高め、管理会計の定着をスムーズに進めていきましょう。数字で語れる組織は、意思決定が速く、変化に強い。管理会計テンプレートは、その第一歩となるはずです。

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